さようなら、お別れしましょう
「イーザック。友となれば、【契約】はいらない。隣国のリュザール王国とは友好関係を築いている」

 兄上は最初からドーヴハルク王国との【契約】による同盟を拒んでいた。
 その理由は、王の力の犠牲となる王女たちに、殺された母を重ねていたからなのか――
 
「同盟は【契約】がなくても結べる」

 兄上はリュザール王家からもらったのか、青い宝石を身につけていた。
 青は聖なる色で、リュザール王国では重要な意味を持つ。

「お前がドーヴハルク王と結んだ【契約】の五つ目を教えて欲しい」

 それは、俺の元からレフィカが離れていくことを意味していた。
 やっと自分の気持ちを自覚したのに、俺はまだレフィカに『愛している』と告げていない。

「父から四つしか教えてもらっていないんです。イーザック様、【契約】の五つ目を教えてください!」 
「レフィカに五つ目の【契約】は教えられない」

 兄上の目もレフィカの目も、俺は見れなかった。 
 きっとレフィカは、俺に失望しているだろう。
 だが、俺はずるいと言われても、レフィカを手放したくない。
【契約】があれば、レフィカは俺の妻のままでいてくれる。

「イーザック様……どうして……」

 レフィカは落胆していた。

「王の仕事がある。悪いが、二人とも部屋から出ていってくれ」

 部屋から追い出そうと、椅子から立ち上がり、扉を開けた――開けた瞬間、侍従が飛び込んできた。

「陛下っ! 陛下~!」

 まさか扉が開くとは思っていなかったらしく、小太りな侍従が、俺に激突した。
  
「ひっ! 陛下っ! し、失礼しました!」

 ぽよんと音をたて。侍従はボールのように跳ね返り、廊下の床に尻餅をついた。


「大丈夫か? そんな慌ててなにがあった?」

 侍従の手には、白い紙が握られている。
 その白い紙にドーヴハルク王家の紋章が入っているのが見えた。

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