さようなら、お別れしましょう
「私たちはレフィカ様付きの侍女に選ばれるにあたり、ドーヴハルク国王陛下より、密命を承っておりました」

 やはり、父はイレーネお姉様の死を信じていなかったのだ。
 そして、私とイレーネお姉様が親しかったことから、いつか接触するのではと思っていた。
 ジェレンたちに私の監視役を命じていた――

「ご安心くださいませ。イレーネ王女の姿は見ておりませんと報告しておきました」
「ジェレン!」
「嘘はついておりませんわ。見ておりませんもの」

 侍女たちも同様にうなずいている。

「カリム様しか見ておりません! 見目麗しいエキゾチックな男性で!」
「ジグルズ様とカリム様が並ぶと、魅力が増しますわ」
「目の保養になりますよねぇ~」
「色んなタイプのイケメンがいるシャルク・ホジャは最高です!」

 シャルク・ホジャでの生活が楽しかったのは、私だけではなかったようだ。

「ドーヴハルク王国からシャルク・ホジャへ。そして、遠いリュザール王国の地まで行かれたレフィカ様に、私たちは誰よりも幸せになってほしいと願っております」 

 私が【契約】を無効にし、生きようとしていたことに、彼女たちは最初から気づいていたのだ。
 ドーヴハルク王国から、ここまでの間、ずっと一緒にいて助けてくれた。

「今まで、私についてきてくれて本当にありがとう」

 左胸に手を置き、私は父と対峙する覚悟を決めた。

 ――父が来る。

 父は多くの王子たちの中で、生き延びて王位を手に入れた。
 中途半端な嘘であれば、簡単に見抜くだろう。

「もし、お父様に嘘をついたと責められたら、私に頼まれたと言ってください」
「レフィカ様!?」
「全員、お父様を知っているはず。甘い人ではありませんよ」

 ジェレンは貴族令嬢で、他の侍女たちもそれなりの家柄である。
 ドーヴハルク王国には大切な家族がいる。

「いいですか? 必ず、自分の身を守ってください。お父様は容赦なく、あなたたちに罰を与えるでしょう」

 誰も『違う』とは言わなかった。

「ドーヴハルク王が到着されました」

 侍従が部屋にやってきて、父の到着を告げた。

「出迎えましょう」
 
 ジェレンたちを伴い、部屋を出た。
 私はグランツエルデ王国に嫁ぎ、多くの人と出会い、二度と会えないはずだったイレーネお姉様と再会した。
 そして、私にはジグルズ様がいる。
 私はもうドーヴハルク王国の後宮の片隅で、虐げられていた王女ではないのだ―― 
< 231 / 249 >

この作品をシェア

pagetop