さようなら、お別れしましょう
51 父の訪れ(2)
父と一年ぶりに顔を合わせた。
その壮健さは変わらず、ドーヴハルクの地に吹く冷たい風を思い出させる青い目と長い銀髪。
王としての威厳を漂わせた雰囲気に、出迎えたグランツエルデ王国側は、圧倒されていた。
「グランツエルデ王に出迎えられるとは思わなかった。会うのは【契約】以来だろうか」
父は【契約】を持ち出し、双方が対等な立場であることを仄めかした。
そんな父にーザック様は動じることなく、優雅に微笑んだ。
「ドーヴハルク王が、子煩悩な方だったとは知りませんでした。意外な一面があるものですね」
嫁いだ娘を心配して訪れたというのが、表向きの理由である。
でも、娘の命を利用した同盟を結んでおいて、子煩悩なわけがない。
【契約】の話を持ち出した父に、イーザック様は嫌みを含んだ返しをした。
「いつ命を落とすかわからない娘だ。会って顔を見ておかねば、リュザール王国に嫁いだイレーネのようになるかもしれないだろう?」
父はわざとイレーネお姉様の名を出し、私の表情の変化を探る。
――やっぱりお父様は、イレーネお姉様が生きてることに気づいてるわ。
でも、私からイレーネお姉様のことを言うつもりはない。