さようなら、お別れしましょう
 ジグルズ様は『大丈夫だ』というように、無言でうなずいた。
 騎士たちが弱いわけではないだろうけど、ジグルズ様がいることで、安心感は倍になる。

「ジグルズ、久しぶりだな。最近はもう旅をしていないのか?」

 お父様がジグルズ様に声をかけた。
 ジグルズ様は動じることなく、友人のように親しげな笑みを浮かべた。

「俺は公爵ですからね。昔よりは気楽ではないですね」

 お父様とジグルズ様が、すでに顔見知りだったことに驚いた。
 
 ――二人は初対面ではない? そういえば、以前、ドーヴハルク王国のことを言っていたような…… 

『旅をしていた頃、ドーヴハルク王国には何度か立ち寄ったが、草原と森林が広がる寒い地だったな』

 初めて会った時、ジグルズ様がそんなことを言っていたような気がする。

「兄上とドーヴハルク王が顔見知りだったとは、知りませんでした」
「ジグルズと偶然出会っただけだ。誰にも言ってなかったのか?」
「お忍びだったので、言わないほうがいいかと思いまして」

 父は王宮を抜け出し、どこかに行くこともあったようだ。
 お忍びを知られたくないだろうと、ジグルズ様に言われ、その通りだったのか、父は否定しなかった。

「では、庭へ」

 イーザック様が庭へ案内する。
 
「新しく妻にした女が、レフィカの命を狙ったそうだな?」

 グランツエルデ王国内では、『正妃の命を狙い、牢屋に入れられた』という話は、すでに有名な話になっていた。
 国民が知っている情報は、父の耳にも入っていると思ったほうがよさそうだ。

「牢屋にいますよ。ドーヴハルク王が娘の命を狙った相手に、そこまで興味があるとは思いませんでした」
 
 父は私の命を狙った相手に興味はない。
 興味があるのは――

「グランツエルデ王の子を産むであろう娘だ。大事にして当然だろう?」

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