さようなら、お別れしましょう
 父にとって、王位を捨てて生きるジグルズ様は、自分を否定する存在なのだ。
 イーザック様のほうを見ると、話を聞いて呆然としていた。
 そんなイーザック様を気にするどころか、無視して父は話を続ける。

「俺はジグルズに王になれと言ったはずだ。なぜ、王にならなかった」

 ジグルズ様が王にならなかったことが、父は不満なようだ。

「何度聞かれても、俺は同じ答えしか返せませんよ。王の力を捨てるためです。弟のイーザックがいたからこそ、俺は迷わずに済んだ」
「兄上……」

 父の目は冷ややかで、ジグルズ様が王位を望まなかったことが、理解できないようだった。
 
 ――でも、お父様にはきっとわからない。

 父にとって、他の兄弟は協力するものではなく、王位を争い殺し合うだけの存在だからだ。

「愚かな。王の力があったからこそ、他国から領土を守ってこれたのではないか」

 イーザック様は父の言葉に反発した。

「俺はそう思わない。俺は即位してから一度も王の力を必要としなかった。なくても、国は治められる」
「若い王らしい思い上がりだ。思い上がるのもいい加減にしてもらいたいものだ。王の力があれば、俺の剣も簡単にかわせるだろう。だが、なければ……」
 
 なにをしようとしているのか、父の手が剣の柄に触れた。

「お父様、やめてください! イーザック様はグランツエルデ王です。剣を向けるなんて許されません!」

 護衛の騎士たちが、今にも剣を抜き、動こうとしている。
 それをジグルズ様が止めた。
 
「王の力をいらないと言うからには、自分の力に自信があるのだろう? どうだ? 剣を交えてみないか?」

 父はイーザック様を挑発した。
 この間の暗殺者の襲撃でわかったことだけど、イーザック様の剣の腕前はそれほど強くない
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