さようなら、お別れしましょう
53 君のための嘘 ※イーザック



  ――レフィカは兄上を愛している。

 兄上は命をかけてレフィカを守った。
 だが、俺はレフィカを守れず、兄上に戦わせてしまった――そんな俺が愛を伝える資格はあるのか?
 レフィカを見つめると、彼女は『なにを言うのだろう』と、不思議そうな顔をしていた。

「ドーヴハルク王。兄のためにレフィカを選んだと言ったが、それは言わないほうがよかったな。俺はそこまで腑抜けではない」
「なんだと? 今、同盟がなくなって困るのは、グランツエルデ王国側だ」

 俺がなにをするか察して、ドーヴハルク王は焦り始めた。
 ドーヴハルク王にとって都合が悪いのは、俺がレフィカを愛さないことだ。
 自分の血を引く子をグランツエルデ王にできないばかりか、同盟も危うくなる。
 黙っているつもりだったのが、兄上に会って気が変わったのだろう。
 ドーヴハルク王はよほど兄上の存在が気にいらないらしい。
 
 ――これからは、兄上に加え、俺も気に入らない人間の一人に加わるだろうが、それはそれで構わない。

「近く兄上の仲介で、リュザール王家と友好関係を結ぶ。そうなれば、南方は問題なくなる」

 ドーヴハルク王は俺が若く未熟だと考え、大国グランツエルデを侮りすぎた。
 実際、俺は未熟だった――レフィカに歩み寄り、彼女と向き合う。
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