さようなら、お別れしましょう
「なぜ、そんな清々しい態度でいられるの……? メリア様に嫉妬し、恨まないのですか!?」
「恨むなんてとんでもないですわ。メリア妃にお伝えください。荷物を運び終えたら、すぐにでも自由……じゃなくて、すぐにでも出ていきますと」

 危ない――うっかり本音が漏れてしまった。
 ベルタは気まずそうな顔で、散らばった手紙を眺めていた。
 嫌がらせをしたつもりが、私には通用せず、どうしていいかわからないようだ。

「王宮を去る前に、私の手紙を見ることができてよかったですわ」
「は……? なにがよかったの?」

 私がイーザック様に宛てた手紙。
 ベルタにぶちまけられてしまったけど、そのおかげでわかったことがある。

「イーザック様は、私の手紙を読んでくださっていたのですね」
 
 ベルタがハッとした顔で、手紙に目をやる。
 手紙の封さえ開けてもらえていないと思っていた。
 でも、手紙の封はすべて開けられていた。
 私の手紙を読んでくれていたのだ。
 それも、破れたり折れ曲がった手紙はなく、綺麗に保管されていた。

「イーザック様は律儀で真面目な方なんですね。そんな方だから、一途に一人の女性を愛し続けていたのでしょう」

 敵国のもくろみによって、押しつけられた妻。
 それが私。
 イーザック様はメリアへの愛を貫きたかったに違いない。
 
「手紙を見ただけで、どうしてわかるのよ……!」

 私が言ったことは、間違っていなかったようだ。
 ベルタは目に見えて動揺していた。
 私は床に落ちた手紙を一通ずつ拾い集め、テーブルの上に置く。
 そして、ベルタに告げた。

「私は二人の仲を引き裂くつもりはありません。王宮から静かに去ります」

 ベルタがここへやってきて、嫌がらせをしたのは、私を王宮から早く追い出したかったからだ。
 メリアに忠実な侍女のベルタ。
 主の恋を邪魔した私を憎んでいた。
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