さようなら、お別れしましょう
【契約】の内容は全部で五つあると、父から聞かされていた。
『王女を正妃として迎える』
『王女の逃亡を禁ずる』
『領土を奪わない』
『妻の不義』
どれか一つを破っても、私は死ぬ。
五つ目、最後の一つだけは教えてもらえなかった。
――ドーヴハルク王の【契約】の力をメリアは知らないはずない……
今となっては、古い昔話だと思っている人も多い『王の力』の話。
古代、神は争いが止まない大陸を嘆き、大陸に住んでいた部族に力を与えた。
それぞれの部族の長に与えた『王の力』――その力によって、大陸に争いがなくなり、国ができたという。
やがて、力は必要なくなり消えていったという話であるが、古い力を残す国もある。
私の故国、ドーヴハルク王国のように。
「正妃だけは譲れません」
「本性を現したわね! 正妃のままでいて、側妃のメリア様をバカにし続けるつもりでしょう!」
「違います」
【契約】の内容は、父とイーザック様だけが知る。
五つ目の【契約】がなんであるかわからない以上、私は慎重に行動しなくてはならない。
「一番愛されているメリア様こそ、正妃にふさわしいわ……! 絶対にメリア様を正妃にしてみせる!」
ブツブツと呪文のようにベルタは繰り返した。
――もし、イーザック様がメリアにお願いされて、正妃の地位を与えたら? そうなったら、そこで私の命は終わり……
いつ、イーザック様が心変わりするかわからない。
私は後宮で生まれ育ち、父の愛人を何人も見てきた。
長く寵愛を維持できた女性はいない。
後宮の女性たちは蹴落とし合いの奪い合い。
まずは国王陛下の侍女になるのが目標で、そこから王の目にとまって部屋をもらい、側妃となる。
側妃になれたら、次は正妃を蹴落とそうとする。
正妃になれば、側妃を貶める――終わりのない女の戦いが、延々と続く。
何度もそれを見てきたというのに……
想いが通じたら、妻になれたら、妃として権力を持てたら――その欲望には果てがない。
――イーザック様、わかっていますよね……?
私から正妃の地位を奪えば、死ぬということを。
メリアが正妃になる前に、私は心臓に刻まれた【契約】を無効にする方法を探さなくてはならない――生き延びるために。
『王女を正妃として迎える』
『王女の逃亡を禁ずる』
『領土を奪わない』
『妻の不義』
どれか一つを破っても、私は死ぬ。
五つ目、最後の一つだけは教えてもらえなかった。
――ドーヴハルク王の【契約】の力をメリアは知らないはずない……
今となっては、古い昔話だと思っている人も多い『王の力』の話。
古代、神は争いが止まない大陸を嘆き、大陸に住んでいた部族に力を与えた。
それぞれの部族の長に与えた『王の力』――その力によって、大陸に争いがなくなり、国ができたという。
やがて、力は必要なくなり消えていったという話であるが、古い力を残す国もある。
私の故国、ドーヴハルク王国のように。
「正妃だけは譲れません」
「本性を現したわね! 正妃のままでいて、側妃のメリア様をバカにし続けるつもりでしょう!」
「違います」
【契約】の内容は、父とイーザック様だけが知る。
五つ目の【契約】がなんであるかわからない以上、私は慎重に行動しなくてはならない。
「一番愛されているメリア様こそ、正妃にふさわしいわ……! 絶対にメリア様を正妃にしてみせる!」
ブツブツと呪文のようにベルタは繰り返した。
――もし、イーザック様がメリアにお願いされて、正妃の地位を与えたら? そうなったら、そこで私の命は終わり……
いつ、イーザック様が心変わりするかわからない。
私は後宮で生まれ育ち、父の愛人を何人も見てきた。
長く寵愛を維持できた女性はいない。
後宮の女性たちは蹴落とし合いの奪い合い。
まずは国王陛下の侍女になるのが目標で、そこから王の目にとまって部屋をもらい、側妃となる。
側妃になれたら、次は正妃を蹴落とそうとする。
正妃になれば、側妃を貶める――終わりのない女の戦いが、延々と続く。
何度もそれを見てきたというのに……
想いが通じたら、妻になれたら、妃として権力を持てたら――その欲望には果てがない。
――イーザック様、わかっていますよね……?
私から正妃の地位を奪えば、死ぬということを。
メリアが正妃になる前に、私は心臓に刻まれた【契約】を無効にする方法を探さなくてはならない――生き延びるために。