さようなら、お別れしましょう
 その美貌で、他国の王をたぶらかし、妃の地位を手に入れる悪魔のような王女たち。

 ――でも、イーザック様は惑わされなかったわ。

 イーザック様はわたくしを愛してくれる。
 けれど、その愛が永遠とは限らない――愛は永遠でないと、わたくしは知っている。
 なぜなら、わたくしのお父様は、お母様一人を愛しているふりをして、家族を騙し続けたからだ。
 お父様には愛する女性がいた。

 ――イーザック様だって、わたくしを愛していると言いながら、いつ裏切るかわからないわ。

「陛下はメリア様だけを愛していらっしゃいますよ」
「ベルタ、唯一の妃でなくては、意味がないのよ。イーザック様は正妃だけは駄目だとおっしゃって、譲らなかったわ!」

 本当にわたくしを愛しているなら、正妃にしたはず!

「……ベルタ、ハサミをちょうだい」
「ハサミですか? 少々お待ちくださいませ」

 ベルタは庭師からハサミを借りてくると、わたくしに手渡した。

「どうぞ、メリア様」

 黙ってハサミを受け取った。
 ハサミを手にした視線の先に、花があった。
 庭一面に咲いた花を一本ずつ切り落としていく。
 パチンとハサミの音が鳴るたび、花は地面に落ち、茎だけを残す。

「メリア様!?」
「ねぇ、ベルタ。知っていた? この花はドーヴハルク王国の花なんですって」

 地面に落ち、泥にまみれた花を見て、くすりと笑った。
 レフィカ様と同じ。
 王宮から追い出されたレフィカ様。
 あなたは平民に混じり、汚れた生活をするといいわ。

「わたくしはこの王宮で、美しく咲き誇る妃となるのよ!」

 声を立てて笑うと、ベルタが怯えた顔をして、わたくしに言った。

「メ、メリア様……。花を切るのは庭師におまかせされては……ひっ!」

 ハサミを持ったまま、ベルタのほうを振り向いただけ。
 それなのに、ベルタは恐怖で顔を歪ませた。
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