さようなら、お別れしましょう
 陰鬱なベルタの顔にはうんざりする。
 レフィカ様の侍女たちは、全員が明るく美しく、健康的だった。
 それが、わたくしには艶のない黒髪に淀んだ黒目、暗い性格をした侍女のベルタだけ。
 ベルタは痩せた体をしていて、見るからに貧相な女性だ。
 もちろん、わたくしの世話をする王宮の侍女はいるけれど、彼女たちに『イーザック様の部屋に行って、レフィカ様の痕跡がないか探して』とは頼めない。
 頼んだところで、『陛下のお部屋に入るには、陛下の許可が必要でございます。陛下付きの侍従におうかがし、陛下に尋ねてまいります』と、返ってくるだけだ。
 わたくしに忠実で、自由に動かせる侍女は、ベルタしかいない。
 王女であるレフィカ様と伯爵令嬢のわたくし。
 大国グランツエルデの貴族令嬢だと言っても、しょせん貴族。
 王族とは違う。

 ――レフィカ様に負けたくないのに……! どうして、王宮にはドーヴハルク人よりも美しい侍女がいないのよ!
 
 王宮に来たばかりだというのに、わたくしの気に入らないことばかりが起きる。

「予想外だったわ。まさか、イーザック様がレフィカ様の手紙を大切にとってあったなんてね」

 わたくしの怒りで歪んだ顔を隠すために、ベルタから顔を背けた。
 苛立ちながら、また一つ花を切り落とす。

 ――もしかして、浮気ではなくて?

 レフィカ様の手紙について、イーザック様に問いただす必要があるわ。

「わたくしを愛しているなら、イーザック様は手紙を処分する手間が省けたと、喜んでくれるはずよ」
「陛下は喜ばれるでしょう」
「そうよね? 部屋のゴミを片付けてあげただけですもの」
「もちろんですわ。メリア様がおっしゃるとおりです!」

 わたくしは自分に忠実な侍女が欲しかった。
 ベルタの生まれは、王都の貧民街出身。
 家は多額の借金を抱えていた。
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