さようなら、お別れしましょう
 私の父は隣国ドーヴハルク王国の国王だ。
 王である父の言葉を思い出す。

『死にたくないなら、夫から愛されろ』
 
 それが、父の結婚祝いの言葉だった。
 けれど、夫が少しも私に興味を持たないなんて、父も想定外だったと思う。
 結婚して一年。
 なにもしてこなかったわけではない。 
 会えないことには、なにも始まらないと、私はイーザック様に自己紹介を兼ね、手紙を書いた。

 ――でも、手紙の返事は一通もありませんでしたね……

 それが、私に対する夫の答えだったのではなかっただろうか。 
『私を愛さない』という答え。
 両想いだったイーザック様とメリアの恋を邪魔したのは私。
 政略結婚相手の私を愛することはない。
 一年間、興味を持ってもらおうと、行動してきたつもりだった。
 けれど、夫は一度も振り向いてはくれなかった――自分の手を握り締めた。

「イーザック様が私以外の妻を必要とされるのでしたら、私は反対できません」
 
 妻とは名ばかり。
 王妃と呼ばれても、夫からの愛情がなければ、権力も皆無。
 決めたことに反対できる立場ではない。
 新しい妻として迎えられたメリアを受け入れる以外、私に選択肢はなかった。
 
 ――イーザック様もそれをわかっていて、私をここへ呼んで、メリアや大臣たちの前で新しい妻を認めさせた……
 
 私が新しい妻を認めれば、側妃であってもメリアは堂々と振舞える。
 むしろ、私が遠慮をして王宮で暮らさねばならないくらいだ。
 
 ――もし、ここで泣いてすがれば、少しは変わるのだろうか。

 そんなことを考えた自分に苦笑した。
 私の人生が泣いて変わったことは一度もないというのに……
 ささやかな望みすら、叶えてもらえたことはない。

『ほんの少しでいいから、王宮の外に出てみたいの。草原を走ってみたい!』 

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