さようなら、お別れしましょう
 最後に見たイレーネお姉様は、泣き笑いのような――なんとも言えない表情をしていた。
 【契約】の言葉を心臓に刻まれた王女は、他の王女たちと引き離され、それ以降、会えなくなる。
 私たち王女は詳しく教えてもらえない。
 それは、嫁いだ王女の末路を知られないようにするためだと思う。
 残酷に死んだのか、それとも生き延びたのか……

 ――教えてもらえないということは、幸せになった王女は少ないのかもしれない。

 そうでなければ、秘密にしないはずだから……
 そのことに気づいているのは、私だけではないと思う。
 他の王女たちも誰かが嫁ぐたび、明るく振舞っていても、その表情には陰がある。
 気づいたところで、後宮に閉じ込められ、王女たちは逃げられない。
 後宮の建物の一番高い場所にのぼり、そこから、イレーネお姉様が去っていった南の方角を眺めた。
 後宮の外が眺められる唯一の場所で、ここは私とイレーネお姉様の秘密の場所だった。
 この場所があったから、私は草原の向こうまで続く空を知り、世界の広さを想像できた。

 ――きっとイレーネお姉様は、今まで学んだ知識を生かして、素晴らしい王妃になるわ。
  
 でも、私はまだ後宮の中。
 母が去り、イレーネお姉様が去り、私はまた一人になった――


 
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