さようなら、お別れしましょう
 侍女たちの噂話では、一族が罰せられずに済んだものの、王に合わせる顔がないと言って、宮廷へ来るのをしばらく控えていた。
 イレーネお姉様の母方の実家は、優秀な文官を何人も輩出している家柄だそうで、一族を追放するのは難しいという。

 ――イレーネお姉様は自分が妃でなくなっても、母親や一族が罰せられず、命まで取られないとわかっていた?

 イレーネお姉様はすべてわかっていて、【契約】を無効にし、自由になった可能性がある。
 
「レフィカ様。ドーヴハルク王国の民は王女様がたに感謝しておりますわ。他国へ嫁いでくれるおかげで、ドーヴハルク王国の平和は守られているのですから」
「そうね……」

 私たちは犠牲になりたくて、犠牲になっているわけではない。
 でも、それをジェレンには言えなかった。
  
「あら、馬車が止まったようですわね。別居先のお屋敷についたようですわ」

 ジェレンが馬車のカーテンを開けた。

「まあっ! 見てください! レフィカ様、大きなお屋敷ですよ!」

 さっきまで町を走っていたと思ったのは間違いで、馬車は屋敷の敷地を走っていたらしい。
 窓から外を眺めると、そこには手入れされた広い前庭があった。

「レフィカ様は王妃ですからね。王妃にふさわしい立派なお屋敷を用意してくださったようですわ」
 
 ジェレンは嬉しそうに馬車から降りて、お屋敷の扉を開ける。
 正面のドアを開けば、美しいステンドグラスが施され、名のある芸術家に掘らせた彫刻、タイルは珍しい石を加工したもの。

「なんて豪華なんでしょう……! ドーヴハルク王国にはない華やかさですわね」

 ジェレンは美しいお屋敷に喜んでいた。
 でも、私は気軽に町へでかけられる小さな家でよかった。

 ――う、うーん、庭が広すぎて、お忍びに行こうにも、忍ぶ自身がないわ。

 人が歩いていたら、すぐに見つかってしまう。
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