さようなら、お別れしましょう
 しかも、イーザック様はご親切にも護衛の騎士を配置している。
 イレーネお姉様が嫁いだ国の情報を集めたいのに、侍女や護衛を大勢連れた買い物しか、できそうにない。
 ちらりとジェレンを横目で見る。

 ――お父様に報告される危険性があるけど、私が動きやすいように、一番身近にいるジェレンを懐柔するしかないわね。

「……ジェレン。私の話を聞いてもらえますか? これからどうするか、話しておきたいのです」
「これからですか?」
「そうです。いずれ、メリアは正妃を望むでしょう。その時、私の命は尽きます」
「で、でも……【契約】を破るのは、グランツエルデ王国側にしても難しいと先ほど……」
 
 素直で感情的なジェレン。
 ジェレンは王女たちの【契約】を知っているけれど、目の前にいる私が死ぬと聞いて、動揺していた。
 頭でわかっているのと、実際に口に出されて言われるのでは違う。

「難しいと言いましたが、決めるのはイーザック様です」

 ジェレンに『イレーネお姉様を捜す』とは言えない。
 ドーヴハルク王国に報告されたら、イレーネお姉様の身が危険になる。
 生きているかもしれないとわかったら、父はなんとしてでもイレーネお姉様を捜しだす。
 
 ――自由になったイレーネお姉様の幸せを邪魔したくない。うまくやらなくては……

「ジェレン、お願いです。私は自分の命が尽きる前に、外の世界を見たいのです」
「レフィカ様……」

 ジェレンの手を握り締め、目に涙を浮かべる。

「夫に愛されなくても……せめて、私に残された時間を有意義に過ごしたい……」

 ジェレンは私に同情した。
 夫に愛されず、命は残りわずかな薄幸の王女。
『かわいそうに』とならなかったら、人でなしである……

< 51 / 52 >

この作品をシェア

pagetop