さようなら、お別れしましょう
 食事を終えたのか、イーザック様が席を立つのがわかった。

「イーザック様。お食事が終わったなら、今から二人で庭を散策しませんか?」
「庭? いや、今は……」
「お忙しいのはわかります。でも、わたくしが王宮に来てから、ずっと仕事ばかりですわ」
「仕事ばかりに見えるかもしれないが、これが俺の日常だ」
「わたくしと過ごす時間を作っていただきたいのですわ」
 
 イーザック様は無言だった。
 もしかして、仕事とわたくしを天秤にかけていらっしゃるの?
 比べるまでもないでしょう?
 わたくしが目を潤ませ、今にも泣き出しそうな顔をすると、イーザック様は慌てて返事をした。

「……わかった。少しの時間、散歩しよう」

 渋々という様子だったけれど、わたくしと庭を散歩することにしたようだ。

「今まで、メリアから不満を言われたことがなかったが……」
「恋人と妻は違います」
「違うか……。そうかもしれないな」

 一瞬、気のせいでなければ、誰かとわたくしを比べた気がした。

「イーザック様。今、どなたの姿を思い浮かべましたの?」

 イーザック様は驚き、わたくしを見た。
 自分でも気づいていなかったようだ。
 文句も言わず、黙ってイーザック様の冷たい態度に耐えていたレフィカ様。
 妃としての務めを果たそうと、努力していたと聞く。
 
「メリアの気のせいだ。俺は誰のことも考えていない」

 ――嘘つき。

 イーザック様は何度もわたくしに嘘をつく。
 だから、わたくしも嘘の笑みを浮かべ、嫉妬心を隠した。

「そうですの? では、庭へまいりましょう」

 庭園には艶やかな花がたくさん咲いていた。
 けれど、庭園の一部は茎だけの寒々しい庭が残っている。
 その庭をイーザック様は眺めて言った。

「茎だけの庭をどうにかしなくてはな。さすがにあのままだと……」
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