さようなら、お別れしましょう
2 形だけの妻になりましょう
「興味のない妻を束縛する気はない。【契約】の範囲内で、好きにすればいい」
私を縛る【契約】の力。
すでに私の自由は制限されている。
イーザック様はそれで私の行動を管理できると、安心しているようだ。
「そうですか。好きにしていいと聞いて安心しました」
「ずいぶんと物分かりがいいな」
「私は物分かりがいいのではありません。諦めているだけですわ」
――諦めるしかないと、私に思わせたのは、あなたです。
いつも私の未来は決定済み――生まれた時から決められていた。
心臓がある左胸に手を置き、静かな口調で、イーザック様と話す。
私とイーザック様が、まともに会話をするのは、これが初めてのことだ。
「イーザック様。やっとお話できましたね。私の存在すら、忘れているのではと思っていました」
私が話し出すと、イーザック様は顔を背けた。
私の顔を見たくないし、声も聞きたくないというように、拒絶した態度をとる。
――私との結婚は、屈辱以外のなにものでもなかった?
私の国、ドーヴハルク王国はこの国より小さな国だ。
国の成り立ちは、血なまぐさいもので、グランツエルデ王国の領土を奪い、国として独立した。
グランツエルデ王国側からすれば、領土を略奪した子孫との結婚である。
領土ばかりか、王女を嫁がせて子供を作り、王家を乗っ取ろうとしているのではと疑われていてもおかしくない。
でも、私はただ――
「あなたとの結婚が政略結婚だとしても、私は幸せな家庭を築きたいと思っていました」