さようなら、お別れしましょう
 私が結婚する時、祝ってくれた商人は彼女だけで、他の商人たちは、この先も商売が続けられそうな王女たちの元へ行った。
  
『私が尊敬する方が言っておられました。願いを叶えてもらうのではなく、願いは自分から叶えるものだと』

 そう言って、ゼリヤは私を勇気づけてくれたのだ。

「レフィカ様といつか会えるのではと思っておりましたが……。その……」

 私がゼリヤと最後に会ったのは、ドーヴハルク王国の後宮だった。
 今の私の境遇をゼリヤは知っているようで、言葉を濁した。

「やっぱりご存じですよね……。妃として嫁いだのですが、うまくいかなくて、イーザック様から別居されてしまいました。ゼリヤにお祝いしてもらったのに、ごめんなさい」
「いいえ! レフィカ様は悪くありません。私はレフィカ様が努力されてきたことを知っています。たくさんの本を読み、勉強されてきたことも!」
「なるほど。ゼリヤが本を仕入れて売っていた相手は、レフィカだったのか」

 ジグルズ様はゼリヤの商売内容を知っているようだった。
 そして、今のゼリヤの服装は鍛えられた腕や足を露出し、ドレスではなく動きやすいチュニックとズボン、立派な双剣を身につけており、少しも商人らしくなかった。

 ――ゼリヤは女商人を名乗っていたけど、ジグルズ様の配下だとすると、ただの商人ではなさそうね……

 ゼリヤの姿を食い入るように見つめていた私に、ゼリヤが気づき、ジグルズ様に視線を送って助けを求めた。

「レフィカは勘がいい。下手な嘘をつけないな」

 両手を上げ、悪びれた様子もなくジグルズ様は言った。

「考えている通り、ゼリヤは俺の配下で、他国へ入り、商売をさせている」
「では、ゼリヤが経営している商会は、公爵家のものなのですね」
「ああ。そうだ」

 ゼリヤが名乗る商会は、大陸でも名の知れた店である。
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