さようなら、お別れしましょう
 ゼリヤが客間へ案内してくれるようで、私とジェレンはフード付きのマントを脱いで侍女へ預けようとした。
 けれど、侍女はマントを受け取らずに手を止めまま、私をジッと見つめた。

 ――もしかして、私がドーヴハルク人だから? 嫌な気分にさせてしまった?

「ゼリヤさん! この方はっ……!」
「もしや!?」

 私の姿を見た侍女たちが衝撃を受け、ゼリヤを見る。

 ――王妃! 王妃だとわかった!?

「ええ。この方は……」
「ジグルズ様の奥様候補でしょうか!?」
「とうとうご結婚を?」
「コックにお祝いの料理を作ってもらいましょう!」
「部屋を飾って、お祝いを!」

 ゼリヤが説明する前に、侍女たちは盛大な勘違いをして、騒ぎ出した。

「あなたたち! この方は、イーザック様のお妃様のレフィカ様ですよ!」

 侍女たちは勘違いだと気づくと、勢いを失い、肩を落としてションボリした。

「言われてみれば、そうですね……。ドーヴハルク王国から妃を迎えたと聞いております……」
「イーザック様は二十三歳。ジグルズ様は二十五歳。イーザック様のほうが年下なのに、先にご結婚されるという屈辱を味わった私たち……」

 ――屈辱を味わうのは本人ではなく? 侍女たち?

 侍女たちは母親のような気持ちで、ジグルズ様を見守っているようだ……
 さすがのジグルズ様も、侍女たちに苦笑していた。

「侍女たちが申し訳ない。俺の結婚問題は周囲の人間にとって深刻な問題らしくてな」
「いいえ。ジグルズ様はとても周囲から好かれていてうらやましいです」
「うん? うらやましい?」
「私は一人でいることが多かったのです。イレーネお姉様以外は、親しく声をかけてくれる者もおりませんでした。そのイレーネお姉様は……」

 ジグルズ様の顔をうかがう。
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