さようなら、お別れしましょう
 気持ちを落ち着かせるため、深く息を吸い込み、左胸に手を当てる。
 
「俺は女同士の嫉妬や争いには疎いが、面倒は嫌いだ。メリアには近づくな」

 メリアはイーザック様の言葉にくすっと笑った。

「レフィカ様、悪く思わないでくださいね? イーザック様はわたくしを心配してくださっているのです」

 両手を胸の前に組み、メリアは目を潤ませた。
 メリアの目は悲しげだったけれど、口もとの笑みは隠せない――隠すつもりはないようだ。

「わたくしはレフィカ様と仲良くしたいと思ってますの。……レフィカ様はどう思っていらっしゃるか、わかりませんけれど」
「安心しろ、メリア。危険な人間を近づけさせない」
 
 ――危険? 私が危険な人間?

 気づけば、私は悪者にされていた。

「レフィカ、お前に別邸の使用を許可する」
「別邸……? それはつまり、別居するということですか?」
「そうだ。自由を望むお前には、願ってもない話だろう」

 それはまるで、『寛大な夫に感謝しろ』という態度だった。
 急な別居の提案に思えたけれど、イーザック様と大臣たちの間で決まっていたことなのか、居並ぶ大臣たちは涼しい顔をし、誰も驚いていなかった。

「生活に困らない程度の金は渡す。形だけの妻とはいえ王妃。みすぼらしい姿はさせられん」

 イーザック様は淡々とした口調で告げた。
 一応、体裁を保つ程度には、王妃として扱う気はあるらしい。

「さすがは陛下でございます! なんと寛大なお心!」
「レフィカ様にとっても別居されたほうがよろしいでしょう。陛下とメリア様が仲良く暮らすのを見るのはお辛いはず!」
「メリア様にはイーザック様とより親密になっていただき、早く世継ぎを産んでいただかねば!」

 大臣たちは妻が誰であるかどうかより、早く世継ぎが欲しい。
 現在、グランツエルデ王家の直系は二人。
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