さようなら、お別れしましょう
――怪しい。さっきから、私に尋ねる回数が多い気がする。
じっとジグルズ様を見つめる。
「……まったく。とんでもないことに巻き込まれたな」
ため息をつき、ジグルズ様は深く椅子にもたれた。
「ジグルズ様。私の勘ですが、ジグルズ様はイレーネお姉様を知っていますね? もしくは、イレーネお姉様の件で、なにか関わったのでは……」
私が追及すると、ジグルズ様は苦笑した。
「まずは、イレーネ王女の生死を知ってどうするか聞かせてくれ」
「お姉様が生きてるのなら、死なずに済むかもしれないと思ったからです」
私の目的を聞いたジグルズ様は、肘をついて目を閉じ、なにか考えているようだった。
「……それは難しいかもしれない」
思考した末に発した声は重く低い声だった。
「私には難しいということですか?」
「ああ。もし、俺が王だったなら……いや、それはありえない話だ」
――イーザック様が王では【契約】を無効にできないといいうこと?
いったいなにをジグルズ様は知っているのだろう。
それに、イレーネお姉様は私の直感通り生きているようだ。
「レフィカ、少し考えさせてくれ。俺はまだレフィカが何者であるか、見極め切れていない」
「……はい」
ジグルズ様が知っている秘密を明かせるほど、私はまだ信用されていない。
イレーネお姉様の身の安全を考えたら当然だ。
逆にジグルズ様が秘密を簡単に話すような人でなくて安心した。
今の会話も、誰にも言わずにいてくれるだろう。
「ジグルズ様に会えてよかったです」
「俺に? そうか?」
「はい。【契約】によって、命を落とさずに済むかもしれないと、わかっただけでも、大きな収穫ですわ」
ジグルズ様は微笑んだ。
でも、その微笑みは少しだけ悲しげで、なにか意味があるような気がした。
「犠牲による力か……」