さようなら、お別れしましょう
 ジグルズ様は目を閉じ、手で目蓋を覆った。
 どこか痛むのか、辛そうに見えた。

「ジグルズ様……?」

 私が『どうかなさったのですか?』と声をかけようとした瞬間――

「ジグルズ様! イーザック様がいらっしゃいました!」

 ――え? イーザック様?
 
 ゼリヤの声が廊下から聞こえる。
 扉を開けなくても、わかるくらいだ。
 ゼリヤが声を張り上げるなんて、よほどの緊急事態に違いない。
 
「イーザックが来た? なぜ?」
 
 ジグルズ様の予定に、イーザック様の訪問は入っていなかったらしく、顔を扉のほうへ向けた。
 重い扉が勢いよく開いた。

「兄上っ……! 二人きりでなにを!」

 その扉を開けたのは、別居後初めて会う私の夫――イーザック様だった。
 イーザック様は供もつけずに、たった一人でやってきた。
 そして、息を切らせていた。

 ――どうして、そんなに焦っているの?

 イーザック様はキッと私とジグルズ様をにらみつけた。

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