さようなら、お別れしましょう
 メリアの根拠のない嫉妬と妄想だ。
 俺は別居してから、一度もレフィカに会っていない。

「レフィカの旅先も知らないというのに、どうやって会うんだ?」
「それなら、視察にわたくしも連れていってくださいませ!」

 兄上の領地でなければ、メリアを連れていったはずだ。
 だが、これはお忍びの視察だ。
 
 ――俺には男のプライドがある!

 王位を捨てた兄上には、絶対教えを乞いたくない。
 幼い頃ならともかく、今の俺は王だ。
 頭を下げて、『どうやって領地を繁栄させたらいいか、教えてください』などと、言えるか!
 
「……連れていけない」

 メリアを連れていけば、大勢の護衛と侍女が必要だ。
 目立つ上に、『国王様ご一行』の大所帯となり、行く先々で、挨拶やらもてなしやら受けるハメになる。
 
 ――俺は忙しい。面倒だ。

 兄上の領地へ行ったら、少しだけ見てすぐに帰ってくる予定でいる――本当に少しだけだ。
 絶対に俺は兄上の様子をうかがおうと、陰から覗いたり、人に尋ねたりするものか!
 
「やっぱり、レフィカ様とお会いするのね……!」
「そんなわけないだろう? 第一、メリアはレフィカの旅先を知っているのか?」
「いいえ。イーザック様が旅行を許可されたということだけ……」
「許可したのは覚えている。だが、俺は旅先まで確認していない」

 メリアは俺の浮気を突き止められなかったからか、悔しそうな顔をした。

 ――なぜだ? 浮気をしていなかったんだぞ。それがわかって、安心だと思うのが普通だろう!?

 俺が浮気をする前提で、メリアが話をしているのだとしたら、かなり厄介である。
 メリアにこんな嫉妬深い一面があったとは意外だった。
 恋人時代のメリアは可愛らしく、健気な女性だった。
 大勢の貴族令嬢たちの中で、俺に一番尽くし、要求が少なかった女性だ。
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