さようなら、お別れしましょう
 それを知った時、胸のあたりがもやもやした。
 病気ではないと思うが、落ち着かない。
 
「なぜ、黙っていた?」
「陛下はレフィカ妃とは別居されておりますし、旅行の許可を出す際に、行き先までお尋ねされませんでした」
「気をきかせて行き先まで言うべきだっただろう」
「は、はぁ……。申し訳ございません」

 レフィカが旅先に選んだのが、兄上の領地でなければ、ここまで気にならなかったはずだ。
 シャルク・ホジャへは馬車で二日ほどかかる。
 明日の午後には着く。

「侍従。レフィカ町のどこに滞在しているか、調べさせておけ」
「お会いになるのですか?」

 侍従に尋ねられ、一瞬、メリアの顔が浮かんだ。
 頭の中にいるメリアは『浮気ですわよ!』と怒っていた。
 これは浮気ではない。
 
「別居中の妻がどうしているのか、様子をうかがうだけだ」
「それは会ったことになるのでは……」
「なにか言ったか?」
「いえ、なにも申し上げておりません」

 ――俺たちは完全に別れたわけではない。

 そして、レフィカの心臓には【契約】が刻まれている。
 命が大事なら、彼女は慎重に行動するだろうが……

『妻の不義』が頭をよぎる。

 兄上と浮気をすれば、レフィカは死ぬ。
 どれか一つでも【契約】を破れば、死んでしまうのだ――


 
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