さようなら、お別れしましょう
19 別居後、初めて会う妻(2) ※イーザック
 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ――兄上の領地が、これほど発展していたとは……

 商業都市シャルク・ホジャ――話で聞くのと、実際見るのとでは大違いだった。
 到着し、すぐに町を歩いた。
 運河には商船がひしめき合い、多くの荷が運ばれている。
 王都とは比べものにならないほどの賑やかな通り。
 異国の人々が行き交い、目にするものは珍しいものばかりだ。
「陛下。ジグルズ様とお会いしますか? 訪問するのであれば、屋敷のほうへお伝えしますが……」
「それは兄上に頭を下げ、教えを乞えという意味か?」
「滅相もございません! そんなつもりで言ったわけでは……!」
「兄上と会う気はない」

 侍従に悪気はなかったとはいえ、今の俺には、『兄上のほうが優れている』と言われている気がしてならなかった。

「侍従。レフィカがどこにいるか探しておけ」
「おまかせを! どこにいても探し出してみせましょう!」

 俺の不興を買った侍従は、レフィカを見つけ、名誉を挽回するつもりのようだ。
 侍従は人ごみの中へ消えていった。
 俺の護衛には騎士たちがつく。
 今回の視察はお忍びだ。
 国王が訪れたと、誰にも知られないよう王家の紋章が入った馬車は使わなかった。
 騎士たちも傭兵を装い、俺は裕福な商家出の息子という雰囲気である。
 これなら、誰も国王とは思わないだろう。
 
「陛下。どちらへ行かれますか?」
「陛下と呼ぶな。俺の正体がバレるだろう!?」

 せっかく俺が高貴なオーラを隠しているというのに、その努力を無にしてくる。

「失礼しました。では、イーザック様……」
「へ、へ、陛下~! 大変ですっ!」
「だから、陛下と呼ぶなと……!」 

 侍従が転びそうになりながら戻ってきた。

「なんだ? 戻ってくるのが、早すぎるだろう?」
「レフィカ妃の居場所がわかりました!」
「そんなに急ぎでなくても構わない」
「町の者が噂しておりまして……」

 ――噂? レフィカはなにか噂になるようなことをしたのか?

 侍従の慌てぶりは尋常ではない。
 レフィカになにがあったというのだろうか。

「ジグルズ様が銀髪の美人を屋敷へ招いたと、町の者が話しておりました」
「銀髪……。レフィカか」
「ジグルズ様が気に入り、恋人にするつもりではないかと……」
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