さようなら、お別れしましょう
「私は別居された妃です。けれど、王家から生活費をいただいている以上、なにか役に立ちたいと考えております」

 ジグルズ様の琥珀色の目が、私の真意を探るように見ていた。
 私が下手な嘘をついたところで、ジグルズ様には簡単に見抜かれてしまうだろう。
 なら、目的をはっきり伝えたほうがいい。
 そう判断した。

「ジグルズ様。私は【契約】を無効にする方法を探しています」
「レフィカ様……! それは……!」

 ゼリヤが驚き、口に手をあてる。
 父に知られたら、殺されてもおかしくないことを口にしている。
 私の自由は同盟の消滅と引き換えだ。
 ドーヴハルク王国の王女としてあるまじき行動である
 でも、ゼリヤもジグルズ様も、私を責めなかった。

「ジグルズ様の元で働き、私が信用できる人間だと思ったら、イレーネお姉様のことを教えていただけませんか?」

 イレーネお姉様が生きている前提で、私が話をしたため、ジグルズ様は苦笑した。

「なぜ、レフィカにとって、イレーネ王女の生死が重要なんだ?」
「それは、【契約】に背いたイレーネお姉様が生きているのなら、【契約】を無効にできる証拠だからです」
「会ってどうする?」
「【契約】を無効にする方法を教えていただくつもりです。私は生きることを諦めたくないんです!」
 
 必死に訴える私を見て、ジグルズ様は少し考えるような仕草をし、それから私に言った。

「いいだろう。レフィカが信用できる人間かどうか、見極めさせてもらう。その上で、俺が知っていることを話す」
「ジグルズ様。レフィカ様は……」
「ゼリヤ。俺は自分の目で見て判断する。見極めるのは、俺の仕事だ」
「失礼しました。出過ぎたことを申し上げました」

 ゼリヤはハッとして、ジグルズ様に一礼した。 
 ジグルズ様はただ優しいだけの人ではない。
 琥珀色の瞳が、鋭くしたたかに人を観察している。
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