True Blue Line ~君は僕のたった一つの宝物~

EP13

 そして迎えた2007年7月13日。
 その日はシフトの絡みで日勤の仕事があった。
 いよいよ武と会う。
 約束は19時30分、空港の到着ロビーで落ち合うことになっている。
 荷物は駅のロッカーに預けているし、念のため、翌日から4日間の休みも取った。
 親には今夜は帰らないと話してある。
 その後のことはもうなるようにしかならないだろう。

 18時40分、空港行きの快速列車に乗り込めば、あとは空港までまっしぐらだ。
 青と紫色のグラデーションがかかった空を見上げる。
 武はこの空の果てからやって来る。
 1時間半ほどのフライト。
 雨が降らなくて良かった。

 19時10分。
 空港に到着する。
 化粧室に立ち寄って、念入りに全身をチェック。抜かりはない。
 完璧とは言い難いけど、ちゃんと武を迎える準備は出来てる。
 あとは武が宿泊するホテルを聞いて、部屋を取って――
 その後は?
 なんか大事なものを忘れた気がする。でもデート前にそれを用意しているのも恥ずかしすぎる。

「武と相談してからにしよう……」

 サンダルのヒールを響かせながら、私は軽やかに空港の到着ロビーを目指した。

 -*-

 19時25分。
 私がA到着口に着いた頃、

『新千歳空港のA到着口に着いた』

 武からメールが入る。大勢の乗客が到着ロビーへ流れ出てくる。手荷物を持って出てくる人を、心躍らせながら待ち、見送った。
 私は、到着ロビーに誰もいなくなるまで待った。
 しかし武らしき人は見当たらない。
 それでも私は武を待った。もしかしたらトイレに行ったかもしれない。
 それか何かトラブルがあったかもしれない。

 私の視線は、がらんとした到着ロビーをさまよう。
 回遊魚の水槽を見つめながら、武を想った。
 どんな服を着るんだろう?
 武は――。

「由惟」

 名前を呼ばれて私は振り返る。
 その瞬間、息が止まった。時間も止まった。
 私の後ろに少し距離を取って立つ男性がいる。
 見た目は私と同年代ぐらい。
 あの時写真で見た髪よりも少し短くなっている。
 整えられた茶色の癖のある髪、細身の黒を基調とした、キレイ系のファッション。
 大きな手にはいぶし銀の指輪。
 特徴的なのが、ダークグレイの目。
 そして日本人男性にしては色素の薄い、その瞳いっぱいに私が映っている。

「そんなに見つめないで。照れる」

 武が照れながら呟く。

「あっ、ごめん」

 パッと視線を逸らす私。
 私よりも頭一つ分身長が高い武。

「改めまして。……栖藤武です」

 軽く会釈する武。

「改めまして、仲崎由惟です。ようこそ!」

 私もぺこりとお辞儀をする。

「由惟ってお嬢様のイメージだったけど、間違いじゃなかったかも」
「ん?」
「俺に勿体ないなって思ってさ……」
「武も私に勿体ないと思ったよ?」

 それを聞いた武はぷっと笑う。

「由惟、手を繋いでもいい? 緊張で少し汗ばんでるかもしれないけど」
「ええ~? どうしようかな?」

 武は慌ててハンカチを探し出す。

「冗談だよ」

 私はくすっと笑う。両手で武の手を握る。
 武の手は大きくて温かかった。
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