True Blue Line ~君は僕のたった一つの宝物~
EP16
暗い店内。温かみのあるランプの光。
まばらだった客は次第に増え、入れ替わり立ち代わり恋人同士が入ってくる。
吹き抜けになった階下では、女性シンガーがR&Bの曲を歌っている。
私の話が一段落した時点で、永村琴音はほうっと小さくため息をついた。
「なんていうか……めっちゃ真面目で誠実な王子様じゃないですか。ホントにネット発の遠距離恋愛だったのか不思議なくらい……」
「そうだよね」
「むしろ私の彼より地に足が付いてて羨ましいです」
「……本当にそう思う?」
「はい。……って違うんですか!?」
私は琴音を見つめた。
アイスミントティーを口に含む彼女が、当時の自分に重なる。
「33歳のフリーターがこの3日間でどれほどのお金を使ったと思う? 毎月ちゃんと貯金していたとしても、限界ってきっとあった。当時の私には見えないモノがもうちゃんとそこにあったのよ」
私の言葉に、琴音は言葉を詰まらせる。
「無理をしていたのは武も同じだった。ううん、私以上に」
「でもでも、仲崎先輩のご両親は最後には認めてくれたんですよね?」
私のアイスティーの氷がカランと音を立てた。
「交際を認めたわけじゃない。結婚なんてなおさら。ただ、彼の人柄と誠意だけは受け止めてくれたの」
「それって……すごく微妙じゃないですか?」
「それでもね、条件付きで会うことだけは許してくれたの」
「そんな……酷いです」
若い琴音には多分わからないだろう。かつての私だってそうだった。
この年になってみれば、親が何を恐れていたのかが何となくわかる気がする。
あと5年早く出会えていたら、未来は変わっていたかもしれない。
私はメニューを開き、追加のドリンクをふたつ注文した。
「サラダなら食べられる?」
「はい!」
琴音のために、サラダも追加した。
――もしも武と結婚して、子供が生まれていたら。
きっと今のような光景があったかもしれないと、ふと思った。
結局私は、前に進みながら、心の奥に置いたままのあの恋だけをちゃんと振り返れなかった。今こうして琴音に話しているのは、そんな過去を見送るためなのかもしれない。
あの6年間を――。
まばらだった客は次第に増え、入れ替わり立ち代わり恋人同士が入ってくる。
吹き抜けになった階下では、女性シンガーがR&Bの曲を歌っている。
私の話が一段落した時点で、永村琴音はほうっと小さくため息をついた。
「なんていうか……めっちゃ真面目で誠実な王子様じゃないですか。ホントにネット発の遠距離恋愛だったのか不思議なくらい……」
「そうだよね」
「むしろ私の彼より地に足が付いてて羨ましいです」
「……本当にそう思う?」
「はい。……って違うんですか!?」
私は琴音を見つめた。
アイスミントティーを口に含む彼女が、当時の自分に重なる。
「33歳のフリーターがこの3日間でどれほどのお金を使ったと思う? 毎月ちゃんと貯金していたとしても、限界ってきっとあった。当時の私には見えないモノがもうちゃんとそこにあったのよ」
私の言葉に、琴音は言葉を詰まらせる。
「無理をしていたのは武も同じだった。ううん、私以上に」
「でもでも、仲崎先輩のご両親は最後には認めてくれたんですよね?」
私のアイスティーの氷がカランと音を立てた。
「交際を認めたわけじゃない。結婚なんてなおさら。ただ、彼の人柄と誠意だけは受け止めてくれたの」
「それって……すごく微妙じゃないですか?」
「それでもね、条件付きで会うことだけは許してくれたの」
「そんな……酷いです」
若い琴音には多分わからないだろう。かつての私だってそうだった。
この年になってみれば、親が何を恐れていたのかが何となくわかる気がする。
あと5年早く出会えていたら、未来は変わっていたかもしれない。
私はメニューを開き、追加のドリンクをふたつ注文した。
「サラダなら食べられる?」
「はい!」
琴音のために、サラダも追加した。
――もしも武と結婚して、子供が生まれていたら。
きっと今のような光景があったかもしれないと、ふと思った。
結局私は、前に進みながら、心の奥に置いたままのあの恋だけをちゃんと振り返れなかった。今こうして琴音に話しているのは、そんな過去を見送るためなのかもしれない。
あの6年間を――。