True Blue Line ~君は僕のたった一つの宝物~
EP19
両親と別れたあと、しばらく胸の奥に重たいものが残っていた。
それでも武と列車に乗る頃には、張り詰めていた糸が少しずつほどけていった。
武と一緒に隣街までの列車に乗り込む。
区間快速になってる列車は、海沿いの線路をひたすらに走る。
太陽に照らされた海は、静かな凪のまま青く輝く。
「由惟と海の街デート、いいねぇ」
「本当に良かったの? 私の行きたいところにして……」
「俺の由惟が望むんだぞ? 当然だろ!」
「俺の由惟……なんかはずかしいな」
私は武のダークグレイの目を直視できず、視線を逸らす。
「由惟も私の武って言っても良いのじゃよ?」
「あ、街が見えてきた!」
はしゃぐ私を見て武は、苦笑する。
「無邪気だなあ。そういうところがたまらんのだが……」
「またオッサンくさいこと言ってる……黙ってたらイケメン王子様なのに」
「俺が?」
「うん。さっきすごく……」
言葉に詰まる。
カッコよかった。キラキラしてた。素敵だった。
それも違う気がする。
武がちゃんと大人の男性なんだって思えた。
「ん? 惚れ直した?」
武が顔を覗き込む。
少し意地悪く笑ってる。
こういう時の武だって無邪気だ。
「うん」
「ならば良し!ぐふふ」
嬉しそうに笑う武。
終点のアナウンスが流れる。
「行こうぜ、由惟」
「うん!」
武に手を引かれて、私は海と坂の街に降り立った。
-*-
「ほ~、これはなかなか見ごたえがあるな」
武は歴史的な建築物を目の当たりにして、目を輝かせている。
道路の脇を、海外からの客を乗せた人力車が通る。
坂を上がれば、街の向こうに海が見渡せる。
バスに乗って高台からの眺望を楽しんだ後、またバスに乗ってベイエリアに向かう。
大正ロマンあふれる古風な建物の数々に、武は興奮しっぱなしだった。
その中に、オルゴールが流れる洋館があった。
ここには多くのオルゴールが集う。
「オルゴールっていいよな」
「武はオルゴールが好きなの?」
「うん。なんか由惟のイメージ」
「私ってばそんなに可憐な乙女じゃないけど?」
「俺にとってはそう感じるの! ここは素直に照れるべき!」
そう言って、武は陶器でできたウサギのオルゴールを手に取る。
陶器でできたウサギは、オルゴールになっている台座から取り外せる作りになっていた。
フルートを持ったウサギ。その台座から流れる曲は、数年前に大ヒットした「Blue Line」だ。
「君は僕のたった一つの宝物……なんつって」
「どうしてそう恥ずかしいセリフをサラッと言うかな……」
「ホントは嬉しいくせに」
「むう……」
武はオルゴールを持ったまま会計に向かった。
私はその後を追いかけて、素早くお札を出す。
「ちょっ!」
「ごめん。私からのプレゼントにしたいの、だめ?」
上目遣いからの、必殺お願いモード。
武は取り出した財布を渋々ポケットにしまう。
「……ダメじゃないけど、やられた」
会計のお姉さんが微笑んでいる。
私も少し恥ずかしくなった。
-*-
武はぐるぐる巻きのソーセージにかぶりつき、ミルクとラベンダーのミックスソフトを楽しむ。
私はメロン味のソフトにしてみた。
「武って甘党?」
「うん。辛いものもイケるし、パフェも由惟と一緒に食べてみたい」
「なんか女子みたい」
「よく言われる……でもオネエにはなれないんだな」
武がよく行くバーに、オネエのバーテンがいるという。
その人に会うためによく訪れるそうだ。
「そうなんだ。お気に入りのバーテンさんがいるんだね」
「妬いた?」
「……ちょっと。というかさっきから女性の視線が武に集まってて……」
「俺の視線は由惟に集まってるわけだが? 不服かね?」
「そんなことはないけど!」
「なら良し!」
私の頭を撫でる大きな手。
私に安心をくれる手。
――武が笑うと嬉しくなる。一緒にいるってこんな幸せなことなんだと思った。
隣にあるガラス細工の店で、私と武はお土産を選んだ。
家族にわたすものなのだそうだ。
二人で一緒に悩んで、決めたおみやげはキラキラしたペアグラス。
「渡したらびっくりするだろうな。俺が選んだとはまず思わん……」
「喜んでくれるといいなぁ」
「そうだな」
少し照れくさそうな武。
あ、そういう表情も好き。
武の色々な表情を私の記憶の中に刻み込む。
離れても消えないように。
――大好き? ううん、たぶんこれが愛の始まり。
それでも武と列車に乗る頃には、張り詰めていた糸が少しずつほどけていった。
武と一緒に隣街までの列車に乗り込む。
区間快速になってる列車は、海沿いの線路をひたすらに走る。
太陽に照らされた海は、静かな凪のまま青く輝く。
「由惟と海の街デート、いいねぇ」
「本当に良かったの? 私の行きたいところにして……」
「俺の由惟が望むんだぞ? 当然だろ!」
「俺の由惟……なんかはずかしいな」
私は武のダークグレイの目を直視できず、視線を逸らす。
「由惟も私の武って言っても良いのじゃよ?」
「あ、街が見えてきた!」
はしゃぐ私を見て武は、苦笑する。
「無邪気だなあ。そういうところがたまらんのだが……」
「またオッサンくさいこと言ってる……黙ってたらイケメン王子様なのに」
「俺が?」
「うん。さっきすごく……」
言葉に詰まる。
カッコよかった。キラキラしてた。素敵だった。
それも違う気がする。
武がちゃんと大人の男性なんだって思えた。
「ん? 惚れ直した?」
武が顔を覗き込む。
少し意地悪く笑ってる。
こういう時の武だって無邪気だ。
「うん」
「ならば良し!ぐふふ」
嬉しそうに笑う武。
終点のアナウンスが流れる。
「行こうぜ、由惟」
「うん!」
武に手を引かれて、私は海と坂の街に降り立った。
-*-
「ほ~、これはなかなか見ごたえがあるな」
武は歴史的な建築物を目の当たりにして、目を輝かせている。
道路の脇を、海外からの客を乗せた人力車が通る。
坂を上がれば、街の向こうに海が見渡せる。
バスに乗って高台からの眺望を楽しんだ後、またバスに乗ってベイエリアに向かう。
大正ロマンあふれる古風な建物の数々に、武は興奮しっぱなしだった。
その中に、オルゴールが流れる洋館があった。
ここには多くのオルゴールが集う。
「オルゴールっていいよな」
「武はオルゴールが好きなの?」
「うん。なんか由惟のイメージ」
「私ってばそんなに可憐な乙女じゃないけど?」
「俺にとってはそう感じるの! ここは素直に照れるべき!」
そう言って、武は陶器でできたウサギのオルゴールを手に取る。
陶器でできたウサギは、オルゴールになっている台座から取り外せる作りになっていた。
フルートを持ったウサギ。その台座から流れる曲は、数年前に大ヒットした「Blue Line」だ。
「君は僕のたった一つの宝物……なんつって」
「どうしてそう恥ずかしいセリフをサラッと言うかな……」
「ホントは嬉しいくせに」
「むう……」
武はオルゴールを持ったまま会計に向かった。
私はその後を追いかけて、素早くお札を出す。
「ちょっ!」
「ごめん。私からのプレゼントにしたいの、だめ?」
上目遣いからの、必殺お願いモード。
武は取り出した財布を渋々ポケットにしまう。
「……ダメじゃないけど、やられた」
会計のお姉さんが微笑んでいる。
私も少し恥ずかしくなった。
-*-
武はぐるぐる巻きのソーセージにかぶりつき、ミルクとラベンダーのミックスソフトを楽しむ。
私はメロン味のソフトにしてみた。
「武って甘党?」
「うん。辛いものもイケるし、パフェも由惟と一緒に食べてみたい」
「なんか女子みたい」
「よく言われる……でもオネエにはなれないんだな」
武がよく行くバーに、オネエのバーテンがいるという。
その人に会うためによく訪れるそうだ。
「そうなんだ。お気に入りのバーテンさんがいるんだね」
「妬いた?」
「……ちょっと。というかさっきから女性の視線が武に集まってて……」
「俺の視線は由惟に集まってるわけだが? 不服かね?」
「そんなことはないけど!」
「なら良し!」
私の頭を撫でる大きな手。
私に安心をくれる手。
――武が笑うと嬉しくなる。一緒にいるってこんな幸せなことなんだと思った。
隣にあるガラス細工の店で、私と武はお土産を選んだ。
家族にわたすものなのだそうだ。
二人で一緒に悩んで、決めたおみやげはキラキラしたペアグラス。
「渡したらびっくりするだろうな。俺が選んだとはまず思わん……」
「喜んでくれるといいなぁ」
「そうだな」
少し照れくさそうな武。
あ、そういう表情も好き。
武の色々な表情を私の記憶の中に刻み込む。
離れても消えないように。
――大好き? ううん、たぶんこれが愛の始まり。