True Blue Line ~君は僕のたった一つの宝物~
EP20
今日は武と過ごす最後の日。
武は夜の便で帰ると言っていたから、あと16時間。
始発の列車に乗り、朝食料金を払って私も武と一緒にホテルで朝食を摂ることにした。
それにしても。何このボリューム。
ビュッフェスタイルってこんなに種類豊富なんだと、私は目を丸くする。
「由惟はパン派なんだな……後で俺もパン持って来るか」
「朝から凄い食べるんだね。胃もたれしないの?」
「うん」
武は食べることが好きなのだろう。
何を食べてても美味しそうに食べるから、見ていて気持ちがよかった。
ご飯と納豆と味噌汁。だし巻き卵、焼き鮭、漬物。うん、純和風な朝食。
将来のためにちょっと覚えておこう。
「フレンチトースト見つけた!」
「あ、美味しそう!」
私も一皿取ってくる。
丁度良い甘さ、柔らかさ。
「小さい頃、よく親父がフレンチトースト作ってくれてさ、朝起きるのが楽しみだったんだよな」
武のお父さんの思い出。
そういえば武がお父さんの話をするのは初めてかもしれない。
家族の話をする時、武はいつも寂しそうな表情をする。
「武のお父さんが? いいなぁ。うちのお父さん、料理は全然ダメなんだよね」
「俺のおかんもそうだった。だから飯は俺が作ることの方が多かったな」
「武が? 女子力高いね……負けられないなぁ」
「ふふふ……カレーなら負けないぜ!」
「自信たっぷりにカレー限定? さすが武……」
「なに納得してるんだよ! カレー以外もたぶん美味いはず……?」
どうしてそこで自信なさげに小声になるのか。
そんなふうに言われたら、食べてみたくなるし、妄想したくなるじゃない。
将来のことを。
そこまで考えて私はハッとする。
いつか武が話してくれたことが蘇る。
年上の彼女から何度も結婚を求められた話だ。
『でも夢があるんだ。もしかしたらもうすぐ届くかもしれない……そう考えたら、結婚はどうしても先延ばしになる。それに彼女とどうしても結婚したいかどうかも判断がつかなくてさ……』
――結婚。武と?
どうしてそんなことを考えてしまうのか。
付き合い始めたばかりなのに、飛躍しすぎと慌てて私は否定する。
私は、武の夢を応援したい。
だから、そんなことを考えちゃだめだ。
「由惟?」
「ん? どうしたの?」
「今日はどこに行きたい? って聞いたんだ」
「あ、ごめん。今日は武の行きたいところにしようよ」
「じゃあ、ラブホがいい」
そのワードを耳にして、瞬時に私の顔が熱を持つ。
「あ~、残念ながらそういうことじゃないんだよなぁ」
「え……でも、ラブホって……」
「二人きりになれる場所が他に思いつかない」
「う、うん……」
「由惟が望まないなら、違う場所にしようか?」
「……ダメ!」
私は武の手を両手で握っていた。
……恥ずかしい。武の顔が見られない。
でも今日を逃せば、次武と会えるのはいつになるかわからない。
昨日、母に言われた「節度」という言葉も頭をよぎった。
どことなく気まずい沈黙が流れた。
「とりあえず、出ようか」
「うん」
朝食会場を出て、二人でロビーに移動する。
手は繋いでいるけれど、私は武に言葉をかけられずにいた。
「……荷物取って、チェックアウトしてくる」
そう告げて私の側から離れる武。
15分ほど待って、スーツケースを持った武がロビーに戻ってくる。
私が座るソファーの隣に座って、武は静かに話し始めた。
「今回俺が会いに来たのは、その……そういう目的じゃないんだ。……正直に言うと、由惟ともっと近づきたいと思ってる」
「うん……」
「ちょっとトラウマがあって……不安なんだ。だから……それでもラブホを選ぶってなんか説得力ないよな……」
「ううん、二人きりになれる場所なら私も行きたい。行こうよ」
「いいの?」
「うん」
ガラガラとスーツケースのキャスターが転がる音がする。
行先は海辺に立つラブホ。
昨日私を見送った後調べて見つけたのだとか。
それは白亜の古城のようなラブホだった。
部屋は最上階のスイートしか空いていない。
武は迷いなくその部屋を取る。
エレベーターで上がって、並んで部屋の前に立つ。
「由惟」
「武……」
「開けるね」
「うん」
扉が開く。
バルコニーから海が見える白い部屋。
ガラス張りのバスルーム。
階下に向かう階段を降りればプールもある。
そして、キングサイズのベッドが一つ。
初めて二人きりで過ごす部屋は、甘い危険に満ちていた。
武は夜の便で帰ると言っていたから、あと16時間。
始発の列車に乗り、朝食料金を払って私も武と一緒にホテルで朝食を摂ることにした。
それにしても。何このボリューム。
ビュッフェスタイルってこんなに種類豊富なんだと、私は目を丸くする。
「由惟はパン派なんだな……後で俺もパン持って来るか」
「朝から凄い食べるんだね。胃もたれしないの?」
「うん」
武は食べることが好きなのだろう。
何を食べてても美味しそうに食べるから、見ていて気持ちがよかった。
ご飯と納豆と味噌汁。だし巻き卵、焼き鮭、漬物。うん、純和風な朝食。
将来のためにちょっと覚えておこう。
「フレンチトースト見つけた!」
「あ、美味しそう!」
私も一皿取ってくる。
丁度良い甘さ、柔らかさ。
「小さい頃、よく親父がフレンチトースト作ってくれてさ、朝起きるのが楽しみだったんだよな」
武のお父さんの思い出。
そういえば武がお父さんの話をするのは初めてかもしれない。
家族の話をする時、武はいつも寂しそうな表情をする。
「武のお父さんが? いいなぁ。うちのお父さん、料理は全然ダメなんだよね」
「俺のおかんもそうだった。だから飯は俺が作ることの方が多かったな」
「武が? 女子力高いね……負けられないなぁ」
「ふふふ……カレーなら負けないぜ!」
「自信たっぷりにカレー限定? さすが武……」
「なに納得してるんだよ! カレー以外もたぶん美味いはず……?」
どうしてそこで自信なさげに小声になるのか。
そんなふうに言われたら、食べてみたくなるし、妄想したくなるじゃない。
将来のことを。
そこまで考えて私はハッとする。
いつか武が話してくれたことが蘇る。
年上の彼女から何度も結婚を求められた話だ。
『でも夢があるんだ。もしかしたらもうすぐ届くかもしれない……そう考えたら、結婚はどうしても先延ばしになる。それに彼女とどうしても結婚したいかどうかも判断がつかなくてさ……』
――結婚。武と?
どうしてそんなことを考えてしまうのか。
付き合い始めたばかりなのに、飛躍しすぎと慌てて私は否定する。
私は、武の夢を応援したい。
だから、そんなことを考えちゃだめだ。
「由惟?」
「ん? どうしたの?」
「今日はどこに行きたい? って聞いたんだ」
「あ、ごめん。今日は武の行きたいところにしようよ」
「じゃあ、ラブホがいい」
そのワードを耳にして、瞬時に私の顔が熱を持つ。
「あ~、残念ながらそういうことじゃないんだよなぁ」
「え……でも、ラブホって……」
「二人きりになれる場所が他に思いつかない」
「う、うん……」
「由惟が望まないなら、違う場所にしようか?」
「……ダメ!」
私は武の手を両手で握っていた。
……恥ずかしい。武の顔が見られない。
でも今日を逃せば、次武と会えるのはいつになるかわからない。
昨日、母に言われた「節度」という言葉も頭をよぎった。
どことなく気まずい沈黙が流れた。
「とりあえず、出ようか」
「うん」
朝食会場を出て、二人でロビーに移動する。
手は繋いでいるけれど、私は武に言葉をかけられずにいた。
「……荷物取って、チェックアウトしてくる」
そう告げて私の側から離れる武。
15分ほど待って、スーツケースを持った武がロビーに戻ってくる。
私が座るソファーの隣に座って、武は静かに話し始めた。
「今回俺が会いに来たのは、その……そういう目的じゃないんだ。……正直に言うと、由惟ともっと近づきたいと思ってる」
「うん……」
「ちょっとトラウマがあって……不安なんだ。だから……それでもラブホを選ぶってなんか説得力ないよな……」
「ううん、二人きりになれる場所なら私も行きたい。行こうよ」
「いいの?」
「うん」
ガラガラとスーツケースのキャスターが転がる音がする。
行先は海辺に立つラブホ。
昨日私を見送った後調べて見つけたのだとか。
それは白亜の古城のようなラブホだった。
部屋は最上階のスイートしか空いていない。
武は迷いなくその部屋を取る。
エレベーターで上がって、並んで部屋の前に立つ。
「由惟」
「武……」
「開けるね」
「うん」
扉が開く。
バルコニーから海が見える白い部屋。
ガラス張りのバスルーム。
階下に向かう階段を降りればプールもある。
そして、キングサイズのベッドが一つ。
初めて二人きりで過ごす部屋は、甘い危険に満ちていた。