True Blue Line ~君は僕のたった一つの宝物~

EP22

 私と武はその後も二人で時間を過ごした。
 別々にシャワーを浴び、着替えて海へ傾いていく西日を一緒に眺めた。
 青に沈んでいく赤。
 それは冷静の中に情熱が沈んでいくような気がして、私は寂しかった。

「一緒にいると、どうして時間の流れが速く感じるんだろう」

 武は何も言わない。
 ダークグレイの瞳はまた何かを迷ってる。
 言えない何かの決断を抱えてる。

「時間だ。……お腹すいた? 空港でなんか食べようぜ」

 部屋を出て、夕暮れの海辺の道を駅に向かって戻る。
 武のスーツケースのキャスターの音が、どこか物悲しく聞こえた。

「うん」
「18時か……」

 武が時計を見て呟く。それから携帯電話で何かを検索し始めた。
 駅のホームに出て、乗車する列車が来るのを待つ。
 そう遠くない場所からカンカンカンと乾いた音が鳴り、快速列車が1本、通り過ぎて行った。

「由惟……明日って仕事?」
「ううん。休みだけど、なんかあったの?」

 4月に入社したばかりの私は、まだ新人扱いだった。
 まだ本格的にシフトの中核へ組み込まれていなかったからだ。

「もし……俺が時間を延ばしたいって言ったら、どうする?」
「時間を延ばす……?」

 武の言葉がすんなりと頭に入って来ず、私は聞き返す。

「帰る日をずらそうと思うんだ」
「え……お仕事は、大丈夫なの? 無理してるんじゃ……」
「このまま由惟と離れたくない。ただそれは俺の我儘だってわかってる」

 私は首を振る。
 別のホームを列車が素通りする。
 その音に武の言葉がかき消される。

「聞こえなかった……もう一度お願い……」
「……もう少しだけ、俺の中に由惟を刻みたい。……ダメか?」
「ダメなわけないじゃん……。もしかして悩んでいたのはそのこと?」

 武は何も言わない。
 ただ、苦笑して見せただけだった。
 そしてその後の武の行動はとても素早かった。
 空いているホテルをすぐに取り、飛行機を明日の21時に取り直した。

「ありがとう、武」
「ありがとうと言ってくれて、ありがとう、な。明日もよろしく」
「うん」

 明日も武と過ごせる。一緒に居られる。
 ただそれだけなのに、心がしっかりつながったことが嬉しかった。

 私はこの日早めに自宅へ戻った。
 武は私が無理をしていないか、帰るまでずっと気にしていた。
 彼がずっと恐れていたことを、今なら少しだけ理解できる気がした。
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