True Blue Line ~君は僕のたった一つの宝物~
EP23
2007年7月16日。本来ならば存在しなかった4日目。
その日は武の希望で、朝一番のバスに乗り日帰り温泉に行くことになった。
バスで片道2時間半、森の道路を進むと熱々の湯が噴き出す温泉街に到着した。
この温泉街には大きな湖があり、武が選んだ温泉施設では、露天風呂が湖面と同じ高さで入浴できるらしい。
「うむ、絶景なり」
バスから降りて伸びをする武。
「ずっとデスクワークだからさ、肩凝るんだよなぁ。温泉来てみたかった」
「それならどうしてもっと早く言ってくれなかったの?」
「移動に時間取られるだろ? その分由惟とイチャイチャする時間が減る!」
「んもう……」
「折角の温泉なんだ。楽しもうぜ!」
武のスーツケースは駅のコインロッカーに預けている。
タオルセットを借りた私たちは、それぞれ90分と時間を決めて温泉を楽しんだ。
-*-
閑散とした休憩所。まだ午前中だからか、人影はまばらだった。
温泉の後はお決まりの瓶牛乳。
腰に手を当てて飲むのが作法だと、武は告げる。
私はコーヒー牛乳。
武はフルーツ牛乳だ。
「ふつう逆だよね?」
「うっさいな……ガキの頃から好きなんだよ、これ」
少し照れた武がかわいい。
「にしてもお肌ツヤツヤ。やべえな!」
「武が言うとエロく聞こえる……ヤバいわ」
「あのなぁ、頭ン中つねにそればっか考えてるわけじゃ……」
私は武の唇に人差し指をあてる。
「わかってるよ。でも7割は考えてるでしょう?」
武はその人差し指を捉え、手の甲にキスをする。
それが答えと言わんばかりに、優しい口づけ。
「俺の由惟は勘が鋭くて困る……」
一応周りに人がいないか確認してから、甘い口づけを交わす。
そこに情熱を必要以上に注がないことで、武は私を守ろうとしている。
その代わりしっかりと手を繋いで、指を絡め合う。
お互いの想いはそれで伝わっていた。
-*-
14時。
温泉の後は、一旦街の中央に戻った。
武が漫画喫茶に寄りたいというので、私もついていく。
初めての漫画喫茶。
ペアシートの席を取って、それぞれ好きな漫画を楽しむ。
すると武が一冊の漫画を持って帰ってきた。
「これ、俺も参加した作品」
それは何年か前にヒットした作品だった。
武がどんな仕事をしているのか、ようやく現実味が出てきた。
「これが自分の作品だったらもっと誇らしいんだろうな……」
そう呟く武。
――いつかそうなるよ、そう言いたかったのに、私は言えなかった。
その言葉がどれほど無責任か私はよくわかるから。
代わりに出てきた言葉は、
「今でも作品を支えてる。それも素敵なことだと思う」
これが精一杯だ。
武は一瞬言葉を失って――、それから小さく呟いた。
「ありがとう」
本当は誰かに自分の仕事を褒めて貰いたかったのかもしれない。
私に見せた笑顔は明るいのに、どこか寂しさを含んでいた。
その陰りもまた、武の一部なのだと思った。
その日は武の希望で、朝一番のバスに乗り日帰り温泉に行くことになった。
バスで片道2時間半、森の道路を進むと熱々の湯が噴き出す温泉街に到着した。
この温泉街には大きな湖があり、武が選んだ温泉施設では、露天風呂が湖面と同じ高さで入浴できるらしい。
「うむ、絶景なり」
バスから降りて伸びをする武。
「ずっとデスクワークだからさ、肩凝るんだよなぁ。温泉来てみたかった」
「それならどうしてもっと早く言ってくれなかったの?」
「移動に時間取られるだろ? その分由惟とイチャイチャする時間が減る!」
「んもう……」
「折角の温泉なんだ。楽しもうぜ!」
武のスーツケースは駅のコインロッカーに預けている。
タオルセットを借りた私たちは、それぞれ90分と時間を決めて温泉を楽しんだ。
-*-
閑散とした休憩所。まだ午前中だからか、人影はまばらだった。
温泉の後はお決まりの瓶牛乳。
腰に手を当てて飲むのが作法だと、武は告げる。
私はコーヒー牛乳。
武はフルーツ牛乳だ。
「ふつう逆だよね?」
「うっさいな……ガキの頃から好きなんだよ、これ」
少し照れた武がかわいい。
「にしてもお肌ツヤツヤ。やべえな!」
「武が言うとエロく聞こえる……ヤバいわ」
「あのなぁ、頭ン中つねにそればっか考えてるわけじゃ……」
私は武の唇に人差し指をあてる。
「わかってるよ。でも7割は考えてるでしょう?」
武はその人差し指を捉え、手の甲にキスをする。
それが答えと言わんばかりに、優しい口づけ。
「俺の由惟は勘が鋭くて困る……」
一応周りに人がいないか確認してから、甘い口づけを交わす。
そこに情熱を必要以上に注がないことで、武は私を守ろうとしている。
その代わりしっかりと手を繋いで、指を絡め合う。
お互いの想いはそれで伝わっていた。
-*-
14時。
温泉の後は、一旦街の中央に戻った。
武が漫画喫茶に寄りたいというので、私もついていく。
初めての漫画喫茶。
ペアシートの席を取って、それぞれ好きな漫画を楽しむ。
すると武が一冊の漫画を持って帰ってきた。
「これ、俺も参加した作品」
それは何年か前にヒットした作品だった。
武がどんな仕事をしているのか、ようやく現実味が出てきた。
「これが自分の作品だったらもっと誇らしいんだろうな……」
そう呟く武。
――いつかそうなるよ、そう言いたかったのに、私は言えなかった。
その言葉がどれほど無責任か私はよくわかるから。
代わりに出てきた言葉は、
「今でも作品を支えてる。それも素敵なことだと思う」
これが精一杯だ。
武は一瞬言葉を失って――、それから小さく呟いた。
「ありがとう」
本当は誰かに自分の仕事を褒めて貰いたかったのかもしれない。
私に見せた笑顔は明るいのに、どこか寂しさを含んでいた。
その陰りもまた、武の一部なのだと思った。