True Blue Line ~君は僕のたった一つの宝物~
EP30
2年目の再会の最終日、2008年5月20日。
去年行ったベイエリアにある水族館へ、今年初めて行った。
武が最初に観光地を検索した時、目に留まったのがこの水族館だったそうだ。
「ガキの時に来たら最高に楽しいはずの場所に、俺は来たことなくてさ。水族館が憧れだったんだ」
「でも、デートで水族館に行ったことはあったんじゃ……」
「俺は無いよ。まず相手がこういう場所に興味なかったしな」
冷たく言い放つ武。
それだけでもうこの話はすべきじゃないと思った。
武に過去があったとしても、それはもう終わったことだ。
今の武は全力で私を見てくれてる。
それでいいじゃないか、そう自分に言い聞かせる。
「それにしても……水族館は広いんだな」
「そりゃあ……いろんな生き物を展示しているし……」
一方で私が足を止めたのが、電気ウナギの水槽だった。
じっと動かない。
息をひそめてこちらを見ている。
電気を発することもなく、ただ私を注意深く観察している。
「……由惟の趣味は変わってるな」
「そうかな?」
「普通はもっと見た目が綺麗なものに惹かれるだろ?」
「そういうのは一度観れば十分だもん」
「俺も?」
「どうして武が出てくるの?」
「電気ウナギを真似すれば由惟に注目され続けるかと」
「電気出したら見てあげる」
「ラブラブ電波なら自信があるぞ」
そんな冗談を言う武。
演技? 時々恥ずかしい台詞を大真面目な顔をして言うこともある。
イルカのショーを真剣に見たり、アザラシショーに自ら参加してみたりもする。
トドのジャンプショーでは濡れることを話さなければ、最前列に座りたがる。
カモメを見てはジョニーと呼んだり、「あ、ペンギンだ。歩き方おもろいな」と喜んだりもする。
そんな笑顔にあふれた武が好きだ。
私の記憶の中でずっと武が微笑んでる。
真っ直ぐに私を見て。
全力で伝えてくる。
こんな私でも誰かに必要とされて、求められることの喜びを。
そんなあなたに私は何を返せますか?
その問いだけが私の中に残り続けた。
-*-
武との3日間を終え、私は1人列車に乗り込んでいた。
さきほど空港で武から渡された、紙袋の中の白いアザラシに視線を落とす。
「どうしてアザラシ?」
「可愛いだろ!……由惟みたいで」
そう言って私に手渡してくれた。
どうして私に渡すの?と聞くと、
「由惟に似たものがそばにあるとハングリー状態が維持できない」
と妙なことを言いだす。
「よくわからない」と返すと、「それでいい」と言う。
保安検査場の手前で、ギリギリまで私の側にいた武は、
ある通話ソフトの導入を検討してると言っていた。
通信環境もどんどん変わっている。俺たちも新しい繋がり方を試してみよう、と武は言った。
少しずつ私も武も変わっていくとしたら。
二人が最終的に行き着く未来は――。
電車のアナウンスが次の目的地を知らせる。
私は、前に進む。
今はただ私にできることを、そう思っていたはずだった。
去年行ったベイエリアにある水族館へ、今年初めて行った。
武が最初に観光地を検索した時、目に留まったのがこの水族館だったそうだ。
「ガキの時に来たら最高に楽しいはずの場所に、俺は来たことなくてさ。水族館が憧れだったんだ」
「でも、デートで水族館に行ったことはあったんじゃ……」
「俺は無いよ。まず相手がこういう場所に興味なかったしな」
冷たく言い放つ武。
それだけでもうこの話はすべきじゃないと思った。
武に過去があったとしても、それはもう終わったことだ。
今の武は全力で私を見てくれてる。
それでいいじゃないか、そう自分に言い聞かせる。
「それにしても……水族館は広いんだな」
「そりゃあ……いろんな生き物を展示しているし……」
一方で私が足を止めたのが、電気ウナギの水槽だった。
じっと動かない。
息をひそめてこちらを見ている。
電気を発することもなく、ただ私を注意深く観察している。
「……由惟の趣味は変わってるな」
「そうかな?」
「普通はもっと見た目が綺麗なものに惹かれるだろ?」
「そういうのは一度観れば十分だもん」
「俺も?」
「どうして武が出てくるの?」
「電気ウナギを真似すれば由惟に注目され続けるかと」
「電気出したら見てあげる」
「ラブラブ電波なら自信があるぞ」
そんな冗談を言う武。
演技? 時々恥ずかしい台詞を大真面目な顔をして言うこともある。
イルカのショーを真剣に見たり、アザラシショーに自ら参加してみたりもする。
トドのジャンプショーでは濡れることを話さなければ、最前列に座りたがる。
カモメを見てはジョニーと呼んだり、「あ、ペンギンだ。歩き方おもろいな」と喜んだりもする。
そんな笑顔にあふれた武が好きだ。
私の記憶の中でずっと武が微笑んでる。
真っ直ぐに私を見て。
全力で伝えてくる。
こんな私でも誰かに必要とされて、求められることの喜びを。
そんなあなたに私は何を返せますか?
その問いだけが私の中に残り続けた。
-*-
武との3日間を終え、私は1人列車に乗り込んでいた。
さきほど空港で武から渡された、紙袋の中の白いアザラシに視線を落とす。
「どうしてアザラシ?」
「可愛いだろ!……由惟みたいで」
そう言って私に手渡してくれた。
どうして私に渡すの?と聞くと、
「由惟に似たものがそばにあるとハングリー状態が維持できない」
と妙なことを言いだす。
「よくわからない」と返すと、「それでいい」と言う。
保安検査場の手前で、ギリギリまで私の側にいた武は、
ある通話ソフトの導入を検討してると言っていた。
通信環境もどんどん変わっている。俺たちも新しい繋がり方を試してみよう、と武は言った。
少しずつ私も武も変わっていくとしたら。
二人が最終的に行き着く未来は――。
電車のアナウンスが次の目的地を知らせる。
私は、前に進む。
今はただ私にできることを、そう思っていたはずだった。