True Blue Line ~君は僕のたった一つの宝物~

EP46

 武が再び私の街にやって来る日が巡ってきた。
 2013年12月21日、この日は大安だった。
 武がやって来る日は晴れることが多かったけど、その日もよく晴れた。
 場所を変えたいと武にあらかじめ伝えて、
 滑走路を見渡せる大きな窓の前で、武の到着を待った。
 武から便の到着時刻を聞いているので、どの便で武がやって来るのかがわかる。

 青い空の彼方から、一機の飛行機が飛んでくる。
 それは白い大きな鳥に見えた。
 少しずつ高度を下げ、脚を下ろした機体が滑走路へ接地する。
 滑走路を走りながら次第に速度を落とし、やがて誘導路へ曲がる。
 定められた場所まで進んで停止すると、ボーディングブリッジが接続され、人の移動が始まる。
 それらを眺めていると武からメールが入った。

『着いた。今、荷物待ち。受け取ったら向かうね』
『わかった』

 空を眺めた。
 青い空、雲はうっすらと視界の端に見えるだけ。
 別の場所では出発の準備を整えている飛行機があった。
 間もなく出るのかもしれない。滑走路に向かって動き出し、大きく翼を広げて空へ舞った。私は飛行機が消えていった空の果てを見つめた。
 暫くしてこちらへ歩いて来る革靴の音がした。

「由惟」

 武の低い声がした。
 初めて武の声を聞いた時のように、心臓がドクンと跳ねた。
 振り返り、その姿を見つめた。
 黒いウールのコートを羽織った、スーツ姿の武が立っていた。
 白いYシャツに、深いブルーのネクタイ。
 靴は、あの時私が武に贈った漆黒の革靴だった。

「武」

 私は武を見て微笑む。
 笑みを返しながら武は私に向かって歩いて来る。
 けれどもある距離まで近づいて、そこから先には近づかない。

 ――境界線。

 二人の視線は、お互い阻むその見えない境界線を見つめた。
 武が躊躇っているのが見えた。

「武」

 初めて武の名前を呼んだ時と同じトーンで、私は武を呼んだ。
 私は境界線を飛び越えるように、勢いよく武に抱き着いた。

「由惟……!?」

 武は私の背中にすぐには手を回さなかった。
 私は何も言わなくても伝わることがあることを知っている。
 武が応えてくれるのをただ待った。
 やがて、ゆっくりと武の手が私の背中に廻る。
 と同時に強く抱きしめられる。

「おかえり」
「……ただいま」

 もう私達に愛の言葉はいらないと思った。
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