ピカレスクに心酔
次の春から高校生になる二個下の妹。頭が良くて気が利いて、おまけに美人だ。
部活で邪魔だから、とばっさりショートにしている私と同じシャンプーを使っているとは思えない、長くてつやつやの黒髪。華奢で白い手足。
初めて彼女を見た時、消えていなくなってしまいそう、という感想が浮かんだくらい、実里は儚くて美しい女の子だった。
「お姉ちゃん? 具合悪いの?」
黙りこくっている私に、実里が追い打ちをかける。
お姉ちゃん、なんて呼ばないで欲しい。――私たちは赤の他人なんだから。
「……ううん、大丈夫。食べたいものは……ちょっと、すぐには思いつかないかも」
「分かった。じゃあもし思いついたら連絡してね」
静かにドアが閉まる。息苦しさから解放されて、深くため息をついた。
実里が我が家にやって来たのは、三年前のことだ。
その日は朝から母が外出していた。確か日曜日で、友達と会ってくると言っていたような気がする。
夕方になっても帰ってこなくて父と二人で訝しんでいた頃、母はようやく玄関に現れた。実里を連れて。
『実里ちゃんっていうの。しばらくうちで預かることになったから、よろしくね』