ピカレスクに心酔


いつの間にか三人から四人でいることが当たり前になった。父も母も、実里のことを本当の娘のように可愛がった。
リビングに飾られる写真には実里も写っているし、物置と化していた一部屋を綺麗に片付けて実里の部屋にした。

家族が増えて賑やかになって幸せなはずなのに、実里と過ごす時間が長くなるうち、拭いようもない違和感や焦燥感が私の胸中を支配していく。


『実里は頭がいいんだな。テスト満点だって。朱南もちゃんと勉強するんだぞ』

『九栗さん家のお嬢さん、すっごく可愛いわよねぇ。実里ちゃん? あ、妹さんなの?』

『洗濯物取り込んでおいてくれたの? 助かったわ~、ありがとう! 実里はほんとに気が利くわねえ』


優秀で美人で気の利く妹。まさに両親が、母が望んでいた理想の娘そのものを具現化した実里。

――じゃあ、私は?

今のままで満足していてはいけない。もっと努力してもっといい姉として、いい娘として、私自身の価値を守らなければ。

勉強は得意じゃなかったけれど、必死に机にかじりついて無事に進学校に合格した。
運動はそこそこ得意だったから、毎年大会で成績を残しているバレー部に入った。
学級委員に立候補して、クラスのみんなと分け隔てなく話したり、ムードメーカーとして場を和ませたりした。

高校に入って最初にもらった通知表の数字はほとんどが4。多分、その時点で心は半分折れていた。

だって、そんな程度じゃ実里には到底敵わない。私が懸命に積み重ねたものを、実里はあっさり超えていく。

< 12 / 85 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop