ピカレスクに心酔
*


学級委員の別名は雑用係だ。先生たちが楽したいがために設けたポジションなんじゃないかと時折思う。
もちろん何か行事がある時は率先して動くけれど、日常は面倒事の受け皿として地味に苦労している。


「おー。坂井、九栗、いいところにきた」


放課後、職員室へ来るようにと担任の森(もり)先生からお達しがあった。
自分で呼んでおいてその言い草は何なんだ、と既に不満が胸中に蔓延っているのは許して欲しい。森先生からの呼び出しで良いことがあった試しがないのだ。


「ちょーっと頼みたいことがあってな」

「それ、時間かかるやつですかー?」

「いやいや、すぐ終わる。ちゃちゃっとやって、ぱーっとやれば、すぐ終わる」


信憑性の欠片もない擬音で返答した先生は、そのまま続けた。


「来週の学年集会で配布予定の冊子があるんだよ。まあ正確に言えば、まだ冊子ではないんだが」

「つまり、俺たちでそのプリントの束をホッチキス止めしろってことですか」

「おお、さすが坂井は話が早くて助かるよ」


プリントとホッチキスは英語準備室に置いてあるからよろしく、と流れるように雑用を押し付けられる。
坂井が文句も言わずに頷くから、私だけ反駁するのは気が引けてしまった。


「失礼しました」

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