ピカレスクに心酔
やっぱりそうなんだ、と思ってしまった。
別に今に始まったことじゃない。高校に入ってから、もっと言ってしまえばその前から、同じようなことを経験している。
私のやっていることが全て偽善に見えるらしい。いや、もしかしたら本当にそうなのかもしれない。
誰かのために――それが結局自分のためになっているのだったら、偽善と言う他に適切な表現は見当たらないのだから。
胸が痛い。でもそれは、目の前で繰り広げられている会話のせいじゃない。
彼女たちが原因なのではなくて、あくまでも芋づる式に痛みを思い出してしまっただけだ。
「九栗?」
無意識のうちに心臓を押さえて俯いていると、背後から名前を呼ばれる。
慌てて振り返れば、そこには五分ほど前まで一緒にいた彼の姿があった。
「……何してるの?」
怪訝そうに問うてきたのは、同じクラスで同じ委員会に所属している坂井だ。
高校二年になってから初めて同じクラスになったけれど、彼とは学級委員として協力せざるを得ない場面が多々あった。温厚で落ち着いていて安心感抜群のザ・優等生。私が彼に対して抱いている印象は、そんなところだ。
「あ、いや、ええっと……」