ピカレスクに心酔
唐突に、しかも陽気に質問を投げかけられて驚いたのだろう。若干気まずそうに逸らされていた視線がかち合う。
その目はやっぱりいつも通り穏やかで、もしかしたらおかしいのは本当に私なのかもしれない、と思ってしまった。
「特にどこも行ってないかな。ずっと勉強してたから」
「ええっ、偉すぎ! でもそうだよね、来年受験だし……もう進路決めてるの?」
「うん。このまま順調にいけば城崎大学受けると思う」
城崎大学って確か、そこそこ偏差値高い国公立だったような。
森先生との進路面談は冬休み前に一度行われた。その時には既に城崎大学の名前を挙げていたとなると、秋の模試の時点で良い点数を取ったということ。
頭のいい人は根本から違うんだろうな、と感心する。
高校受験は何とか上手くいった私も、さすがに大学受験はどうにかなりそうもなかった。国公立、ましてや四年制大学は諦めて、短期大学に行こうか検討中だ。
『私、お姉ちゃんの高校行こうかな』
きっと、実里なら大学もすんなり受かるんだろうけれど。
「ごめん。つまんないね、俺の話」
彼の謝罪で我に返る。
相槌も忘れて一人で勝手に考え込んでしまっていた。慌てて「そんなことないよ」とフォローする。
「ずっと勉強ってすごいよ。こつこつ毎日……なんて、私は絶対無理だもん」