ピカレスクに心酔
沈黙が落ちた。
ぱちん、と一束ホッチキスを止め終えて、坂井が再び口を開く。
「九栗は?」
「え?」
「九栗だって、いつも部活やってるでしょ。冬休みだって、バレー部練習してたんじゃないの?」
「それは、そうだけど……」
そうだけど、そうじゃないような気もする。
間違いなく真面目にきちんと練習をしているし、面倒だとか手を抜きたいだとか思ったことはない。でも、それは。
「みんなそうだよ。みんな頑張ってるし、当たり前のことだから」
特別尊いことじゃない。特別秀でているわけじゃない。
しかも元を辿れば、私がバレー部に入部した動機なんて不純でしかない。結果が欲しいとか、認められたいとか、そういう承認欲求に突き動かされただけだ。部活だけじゃない。学級委員だってそう。
薄っぺらくて空っぽなまま、それでも私自身を見て欲しくて足掻いている。
「当たり前じゃないよ。むしろ、当たり前なんて言えるくらい努力してるから部長になったんじゃない?」
喉から手が出るほど欲しかった肯定の言葉を、坂井は何の温度も乗せずに淡白に放つ。
だめ。素直に、まともに受け取るな。そうやって調子に乗るから私は馬鹿なんだ。
「俺は、九栗が羨ましいよ」