ピカレスクに心酔
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二重人格――正式には、解離性同一性障害と呼ばれる。
一人の人間の中に、全く別の性格・記憶などを持つもう一つの人格が現れる神経症だ。激しい苦痛やストレスを受けた時、その心的外傷から自身を守るために、自分ではないもう一人の人格をつくりあげる。
「主な原因は、幼少期の精神的なストレス……」
小難しい文章を理解するのには少々時間がかかる。音読しながら頭に入れるのが一番手っ取り早い。
図書館で借りた本のページをめくりながら、そこに記載された内容をぶつぶつと独りごちる。
「……だめだ。休憩しよ」
脳の限界を感じ、糖分を求めて立ち上がった。
そもそも読書は得意じゃない。加えて、専門用語頻出の医療分野なんか絶対に普段は手を出さないのに。
『これは俺と朱南との秘密。分かった?』
小指がまだ熱を帯びているような気さえする。あれもこれも、間違いなく彼のせいだ。
『二重人格ってこと、なの?』
昨日、軽々しく尋ねてしまったことに遅ればせながら反省した。
自分なりに調べてみて分かったのは、そんな簡単に括れるような症状でも現象でもなかったということだ。
二重人格どころではなく多重人格として現れる場合もあるし、人格の入れ替わりを自身でコントロールすることができる場合もある。その詳細はまだまだ研究途上で、人によって治療法も異なると。