ピカレスクに心酔


いくら専門書を読み込んでも知識を得ても、それは一般概要の話。本当のことは、本当の彼は、彼自身に聞かないと一生分からない。

やっぱりまだ怖いし、これから後悔するのかもしれないとも思う。それでも、知ってみたいと思ってしまう。
これが単なる好奇心なのか、はたまた自分の中にほんの少し燻っている火種が起因しているのかは謎だ。


「あ、お姉ちゃん」


リビングに入ると、ふわりと紅茶の香りがした。実里が淹れていたのだろう。


「ちょうど良かった。いまクッキー焼けたから持っていこうと思ってたの」

「また作ったの? 好きだね、ほんとに」


時刻は十五時過ぎ。
休みの日、実里はよくお菓子作りに精を出している。彼女の作る料理やお菓子自体は好きだ。失敗しているところなんて見たことがない。


「お父さんとお母さんは?」

「さっき買い物に行ったよ」

「……そうなんだ」


二人きりは気まずい。そう思っているのは私だけかもしれないけれど。

先に椅子に腰を下ろしていた私の元へ、実里がティーカップを運んできた。小皿に乗ったクッキーも添えられている。
しばらくキッチンで片付けをしていた彼女は、とうとうすることがなくなったのか私の向かいに座った。

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