ピカレスクに心酔
「今日、部活どうだったの?」
沈黙に耐えかねたように、実里が問うてくる。
土曜日の午前中はいつも部活があった。今日も例に漏れず練習に参加して、その帰りに図書館へ寄ったのだ。
昨日は結局最後まで部活に行く勇気が出なかった。何だかんだで休んだことなんかなかったのに、皆勤は呆気なく潰えた。
そのせいか、今日は部活のみんながやけに優しくしてくれたような気がする。前までの自分ならその優しさを素直に受け取れていたはずだ。今はただ、表面的な優しさでしかないのでは、と考えてしまって良くない。
「……普通だよ。いつも通り」
ティーカップを持ち上げ、湯気を吹き消す。
ここだけ切り取れば優雅な土曜日の午後。実際は部活帰りのジャージ姿にぼさぼさ頭の、優雅さの欠片もない光景だ。
「そっか、良かった。……お姉ちゃん、昨日元気なかったから心配だったんだ」
綺麗な言葉を吐いて綺麗な所作で紅茶を口に含む妹。私とは正反対の、完璧でいい子な実里。
彼女と二人きりでいたくないのは、自分のだめなところが浮き彫りになってしまうからだ。
勝手に比較して勝手に負けた気になって勝手に落ち込んでいる。面倒でどうしようもない。でもそれ以外に奮起する方法がない。
「お姉ちゃん。私ね、来年家を出ようと思ってるの」