ピカレスクに心酔
*


「こないださ、なんか……ごめんね」


部活のミーティングが終わり、体育館からは後輩たちが出て行くところだった。
きちんと片付けが済んでいるか倉庫の中を点検していると、しおらしさと気まずさが共存した謝罪が飛んでくる。

声の主は振り返る前から分かっていた。点検表の挟まったバインダーを掴む指先に、意図せず力がこもる。


「ていうか、最近ちゃんと話せてなかったなと思って……」


深呼吸を一回。私の返事を待たずに続けられた言葉に対して、やや覚悟を決めて視線を移した。

こちらが顔を向けた途端、相手の目は逃げるように逸らされる。
言い訳じみた話し方をするユキの両脇には、マミとエリ。予想と一ミリも違わない顔ぶれだった。


「昼休みとかもさ、朱南すぐにどっかいっちゃうし……なかなかタイミング掴めなくて」


要するに、私はささやかな逃避すら許されないわけだ。どんなに嫌な思いをしても傷ついても、ただ取り繕って笑っていろ、と。つまりそういうこと。
それが私の役割で、彼女たちにとって私はそういう存在なのだと、改めて烙印を押されている。

黙り込む私に、目の前から息を呑む気配がした。


「……えっと、ごめん。何の話?」

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