ピカレスクに心酔
取ってつけたような大声で不自然に納得の意を示すユキと、安堵の表情を浮かべた他二人。
心臓の奥が、すう、と冷えていく。
「元気ないから心配してたんだよ、何かあったのかなって!」
「そうそう!」
「いつも通りおバカな朱南で安心したわ~」
私の嘘は、ただの事実として書き換えられた。誰一人として、こんなあからさまな嘘を見破ってくれなかった。
普通に友達をやっていればいくらでも気が付くことができるはずの、なんてことない、こんな程度の、くだらない嘘なのに。
放課後の教室で私の愚痴を言われていた時より、今の方がよっぽど虚しい。
「ご……ごめん、私、ちょっとトイレ……」
喉の奥から何かがせり上がってくる。吐き捨てた言葉は弱々しく震えた。
堪らず駆け足でその場を離れた私の背後で、「早速トイレ~?」と揶揄う声が響いていた。
体育館を出て、トイレの横を素通りして、ひたすらに廊下を走る。
どこに向かっているのか分からない。多分、どこに向かおうとしているわけでもない。どこでもいい。できるだけ遠くに逃げたかった。