ピカレスクに心酔
誰にでも優しく平等に、いつでも笑顔で、常に「いい子」でいること。
私が自分で自身に望んだ。理想だったはずが、いつの間にか自分の首を絞め続けて雁字搦めになっていた。
分からない。分からないよ。何が本当の私で、どうすれば楽に呼吸ができて、誰のことも傷つけずに済むのか。
もう随分と前から、薬だろうと毒だろうと、文句を言わずに飲み干すのが癖になっていた。今更どう足掻けばいい?
嗚咽を噛み殺して、電灯から逃げるように暗い階段を駆けのぼる。
二階から三階へ差し掛かった時、息が切れて足を止めた。膝に手をつき俯きながら、自分の震える呼吸音を他人事のように聞き入れる。
その音の中、静かに加わったのは、階段の上からやって来る足音だった。
私が顔を上げると同時、足音の主が姿を現す。
階段の下と上、視線が交わって、数秒そのまま見つめ合った。
薄い闇に馴染む彼の黒い瞳が、僅かに見開かれる。
必死にその瞳の奥の感情を探した。答えは、先に口を開いた彼がくれた。
「……九栗、どうしたの?」
そこにいたのは、坂井だった。優等生で、何でもそつなくこなして、穏やかに笑う、ただのクラスメート。
「何で、」