ピカレスクに心酔
ぽつりと息を吐くように羊が呟く。
想定外の反応に思わず彼女の方へ顔を向けると、羊は眉尻を下げて力なく笑った。
「私もね、やりたいこととか、自分に向いてることとか全然分からなくて……でもみんなしっかり将来のこと考えてるから、こんなにふわふわしてるの私だけなのかなって不安だったんだ」
そう語る羊の声色や表情は確かに自信なさげではあったけれど、前向きな思いが滲んでいる。ちゃんと向き合わなきゃ、進まなきゃ――そんな類いの決心が見てとれるから、私には眩しいくらいだった。
嫌々ながらも結局はやるべきことを自分の意思でやり遂げられる人は、実のところ本当に凄いと思う。ようやく気付いた。私は多分、自分の意思がとても弱い人間なんだと。
できることなら逃げ出したい。もっと先延ばしにして、モラトリアムを楽しみたい。誰かのために、という言い訳がないと、私は永遠に重たい腰を上げられないのかもしれない。
「……羊は大丈夫だよ。いざという時、びっくりするくらい行動力あるから」
今までの彼女の言動を鑑みての発言だった。脳内で精査することもなくそのまま零れ出た直後、嫌味な響きが含まれていないか心配になる。
「ええ……? そうかなあ。結構優柔不断なんだよ、私」