ピカレスクに心酔
勝手に口から零れ落ちた告白に、坂井は顔色一つ変えない。
どうして自らこんなことを打ち明けているんだろう、と一種の絶望が胸を掠める。それでも伝えたのは確かに自分の意思だった。
「うん」
彼がゆっくり頷く。
「知ってた」
天気予報を教えた後のような素っ気なさと呆気なさで、坂井はそう言った。彼の中で至極当然のことだと、突きつけられているようだった。
「前にも教室で話してたの、聞いたことあるんだ。ごめん」
ごめん、と謝るくせに、言葉の裏には感情が付随していない。
その時ようやく分かった気がした。坂井忍という人は、全然優しくなんてないこと。
「……そ、っか」
声が震える。ひたすらに惨めだった。
坂井は前からとっくのとうに知っていたのだ。私がいかに薄っぺらくて綺麗事ばかり並べている偽善者なのか。知っていて、知った上で、いい子を演じ続ける私を傍観していたのだ。
だったら言ってくれればよかった。変に調子に乗らせたりしないで、さっきドアを開けたみたいに、水を差してくれればよかったのに。
急に気が抜けてしまった。優等生の坂井には絶対に敵わないんだと再認識して、目頭が熱くなる。
「九栗?」