ピカレスクに心酔


その言葉にようやく視線を周囲へと向ければ、確かに自分はかなり注目を集めていたようだ。呆気に取られている子、疲労感を滲ませている子、物珍しそうに目を丸くする子。
狂ったようにスパイクを打ち続ける私を見かねて、副部長の珠々子が直々にこちらへやって来たのだろう。


「あ……ごめん、ちょっと考え事してて……」

「考え事しながらあんな強烈なスパイク打ってたんですか!?」


恐ろしい人! と自身の二の腕を撫でさすりながら慄く彼女に苦笑が漏れる。

珠々子は普段から人一倍練習をして、努力を怠らない生真面目な後輩だ。相手が誰であっても臆することなく自分の意見を主張できたり、時には激しい口論を繰り広げたりする。
私には持っていない性質をたくさん持ち合わせている彼女のことが羨ましいと同時に、頼もしくもあった。


「とにかく、サーブ練はもう終わりでいいですよね。この後はペアでトス練でいいですか?」

「うん、そうしよう」


反応が鈍い私に代わり、珠々子が部員みんなに指示を出してくれる。
それぞれのペア内でボールが飛び交い始めると、「私たちもやりますか」と副部長の彼女が振り向いた。


「珠々子、こっち来て」

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