偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
「すみません、変な話を聞かせてしまって。仕事には影響させませんので」
「いや、そういう意味で言ったわけじゃない。こちらこそ、プライベートな話を聞いて悪かった」
「部長が謝ることじゃないですよ。勝手に報告したの、私ですから」
三原さんが悪びれもせず割って入った。
だったら少しくらい反省してほしいが……。
そう思いながら睨んでみたものの、本人は気にした様子もなく、それどころか何かを思い出したように「あれ?」と首を傾げた。
「でも、本当に別れたんですか? 私、先月仕事で相沢さんに会いましたけど、普通にまだ片瀬さんと付き合ってるみたいな話をしてましたよ」
「え……?」
「なんだったかな。片瀬さんが最近忙しいとか、だからちょっと機嫌が悪いとか……そんな話だったと思いますけど、別れたなんて全然思わなかったです」
「まあ……取引先の人間にいちいち別れたなんて言う必要もないだろうし、仕事上やりづらくなるからじゃないかな。それに……別れたのは別れたんだけど、向こうはまだやり直したいみたいで」
「じゃあ、片瀬さんから振ったんですか!?」
三原さんが今日一番ではないかと思うほど驚いた声を上げる。
いったいなんだ。その反応は……。
彼女は「だって相沢さんですよ?」と言いたげな顔。私から別れを告げたことがそんなに意外なのか……。