偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
会議が終わって資料を抱えたまま会議室を出ようとすると、一つ後輩の三原日奈子さんが待ってましたとばかりに私の隣へすすすっと近寄ってきた。
そして周囲を気にする素振りを見せながらも、声を潜めることなく口を開いた。
「片瀬さんのラブラブな彼氏って、博洋堂勤務でしたよね? しかもL'ÉCRINの広告担当って聞いたんですけど、彼氏と仕事でも関わるってやりづらくないですか?」
「ラブラブって……。いや、私自身がL'ÉCRINの担当ってわけじゃないから、仕事ではそこまで顔を合わせないよ。それに……彼氏っていうのは、もう違うかな。二か月前に別れたんだよね」
「え!? あの超エリート街道まっしぐらの彼氏と別れたんですか!?」
三原さんが会議室中に響き渡りそうな声を上げるものだから、私はぎょっとして人差し指を唇に当てながら「しーっ」と慌てて制した。
だけど、彼女は目を丸くしたまま、どうしてそんな重大ニュースを今まで黙っていたのかというように私を見つめている。
「ちょっと三原さん、まだ勤務時間中なんだから、そんな大声でプライベートな話しないでよ」
「いやいや、むしろこれは仕事にも関係ある話じゃないですか。L'ÉCRINの広告を担当してる博洋堂の相沢さんと別れたって、営業企画部としてはそこそこ重要情報ですよ」
「そう言われれば……まあ、まったく関係ないとは言えないけど」
確かに元カレが取引先の担当者なのだから、彼女の言い分にも一理あるのかもしれない。
そんなとき、三原さんが突然くるりと後ろを振り返る。嫌な予感がしたが止める間もなく、まだ会議室に残って資料を確認していた久世部長へ声をかけた。
「部長は聞いてました? 片瀬さん、博洋堂の相沢さんと二か月前に別れてたみたいですよ!」
「ちょっと、三原さん! なんで部長に報告するの!」
「だって、L'ÉCRINは部長が担当じゃないですか」
慌てて止めたところですでに遅く、久世部長はほんの一瞬だけ意外そうに目を見開き、それから私へ視線を移した。
「……いや、知らなかったが」
それだけ言って口を閉ざした部長の表情からは、それ以上の感情を読み取ることなどできない。そもそも考えてみれば部下が取引先の男性と付き合っていようが別れていようが、業務に支障さえ出なければ部長にとってはどうでもいい話だ。
そして周囲を気にする素振りを見せながらも、声を潜めることなく口を開いた。
「片瀬さんのラブラブな彼氏って、博洋堂勤務でしたよね? しかもL'ÉCRINの広告担当って聞いたんですけど、彼氏と仕事でも関わるってやりづらくないですか?」
「ラブラブって……。いや、私自身がL'ÉCRINの担当ってわけじゃないから、仕事ではそこまで顔を合わせないよ。それに……彼氏っていうのは、もう違うかな。二か月前に別れたんだよね」
「え!? あの超エリート街道まっしぐらの彼氏と別れたんですか!?」
三原さんが会議室中に響き渡りそうな声を上げるものだから、私はぎょっとして人差し指を唇に当てながら「しーっ」と慌てて制した。
だけど、彼女は目を丸くしたまま、どうしてそんな重大ニュースを今まで黙っていたのかというように私を見つめている。
「ちょっと三原さん、まだ勤務時間中なんだから、そんな大声でプライベートな話しないでよ」
「いやいや、むしろこれは仕事にも関係ある話じゃないですか。L'ÉCRINの広告を担当してる博洋堂の相沢さんと別れたって、営業企画部としてはそこそこ重要情報ですよ」
「そう言われれば……まあ、まったく関係ないとは言えないけど」
確かに元カレが取引先の担当者なのだから、彼女の言い分にも一理あるのかもしれない。
そんなとき、三原さんが突然くるりと後ろを振り返る。嫌な予感がしたが止める間もなく、まだ会議室に残って資料を確認していた久世部長へ声をかけた。
「部長は聞いてました? 片瀬さん、博洋堂の相沢さんと二か月前に別れてたみたいですよ!」
「ちょっと、三原さん! なんで部長に報告するの!」
「だって、L'ÉCRINは部長が担当じゃないですか」
慌てて止めたところですでに遅く、久世部長はほんの一瞬だけ意外そうに目を見開き、それから私へ視線を移した。
「……いや、知らなかったが」
それだけ言って口を閉ざした部長の表情からは、それ以上の感情を読み取ることなどできない。そもそも考えてみれば部下が取引先の男性と付き合っていようが別れていようが、業務に支障さえ出なければ部長にとってはどうでもいい話だ。